まばたきするな

『ドクター・フー』第3シリーズ「まばたきするな」：時空を超える恐怖と感動の物語

2007年6月9日、BBC Oneで初放送された『ドクター・フー』第3シリーズ第10話「まばたきするな」(原題:Blink)は、シリーズの中でも特に高い評価を受けているエピソードです。監督はヘッティ・マクドナルド、脚本はスティーヴン・モファットが担当しました。モファットは2006年の『ドクター・フー・イヤーブック』に掲載された短編小説「サリー・スパロウのクリスマス休暇」をベースに、このエピソードを創作しました。

物語の概要

物語は、1969年に謎の異星人、嘆きの天使に捕らわれた10代目ドクターと、2007年に暮らすサリー・スパロウという若い女性を中心に展開します。ドクターは、時空を超えた不可解なメッセージを残し、サリーに助けを求めます。サリーと彼女の友人ラリーは、残された手がかりを解読し、ドクターと彼のコンパニオンであるマーサ・ジョーンズを救うため、危険なゲームに挑むことになります。

このエピソードの特徴として、ドクターの登場シーンが非常に少ない点が挙げられます。「Doctor-lite」エピソードと呼ばれ、他のエピソードとの同時撮影を可能にしました。そのため、限られた時間の中で、緊迫感と謎解きの要素が凝縮された、非常に質の高い作品となっています。

制作過程

脚本を担当したモファットは、自身の過去の経験や、子供の遊び「だるまさんがころんだ」からインスピレーションを得て、嘆きの天使という独特の敵キャラクターを生み出しました。撮影は、放棄された屋敷やカーディフ湾などで行われ、嘆きの天使の造形には特殊メイクと精巧な衣装が用いられました。

キャリー・マリガンが演じたサリー・スパロウは、このエピソードの成功に大きく貢献しました。少ない出演シーンにも関わらず、彼女の演技は視聴者の心を掴み、高い評価を獲得しました。

また、撮影においては、同時撮影手法（double banking）が用いられ、限られた時間の中で効率的に撮影を進めることが出来ました。この手法は、以前のエピソードでも採用されていましたが、「まばたきするな」でも効果を発揮し、クオリティの高い映像を実現しました。

特殊効果とサウンドデザイン

嘆きの天使の特殊効果は、俳優の演技とデジタル処理を組み合わせることで、不気味で印象的な視覚効果を生み出しました。天使の動きは最小限に抑えられ、その静止と不気味さが、かえって恐怖感を増幅させています。

サウンドデザインもまた、効果的に恐怖感を演出しています。静寂の中で聞こえるわずかな音、または、全く音がしないこと自体が、視聴者に緊張感を与えます。

放送と評価

「まばたきするな」は、イギリスで662万人の視聴者数を記録しました。批評家からは脚本、演技、演出、そして嘆きの天使の造形など、あらゆる面で高い評価を受けました。多くの批評家が、このエピソードを『ドクター・フー』シリーズ最高傑作の一つと評価しています。

このエピソードは、数々の賞を受賞しました。モファットは英国アカデミー賞テレビクラフト賞とBAFTAウェールズ賞で最優秀作家賞を受賞し、マリガンはConstellation Awardを受賞しました。また、このエピソードはヒューゴー賞映像部門短編部門を受賞しました。

嘆きの天使は、その後もシリーズに登場し続け、シリーズを代表する人気モンスターとして確固たる地位を築きました。

作品への影響

「まばたきするな」は、その後の『ドクター・フー』シリーズや関連作品にも大きな影響を与えました。嘆きの天使は、何度も再登場し、様々な物語に彩りを加えました。また、このエピソードで生まれた名言や概念は、後のシリーズでも引用され、作品世界を豊かにしています。

「まばたきするな」は、短い尺の中に、スリリングな展開、複雑な謎解き、そして深い感動が凝縮された、まさに傑作エピソードです。ドクター・フーシリーズを代表する名作として、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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