ユコウ

ユコウ：希少な柑橘の復活物語

ユコウ（柚柑、学名:Citrus yuko）は、ミカン科に属する常緑の小高木で、その果実は強い香りとまろやかな味わいを持ちます。ユズよりも一回り大きく、豊かな香気から「柚香」とも呼ばれる、日本原産の柑橘類です。

徳島県上勝町：ユコウの主要産地

ユコウは自然交雑によって生まれたユズの変種であり、古くから徳島県や高知県で栽培されてきました。特に徳島県は、全国生産量の99％以上を占めるユコウの一大産地で、その大部分を上勝町が生産しています。1981年の大寒波以前には、徳島県内に樹齢150年を超える老樹が数多く存在していましたが、ユコウはユズやスダチに比べて耐寒性に劣るため、この寒波によって樹園地面積が減少しました。

その後、スダチの代替品としての利用や加工品需要の低迷、知名度の低さによる価格競争力の弱さなどから、ユコウの生産量はピーク時の4割程度にまで落ち込みました。

しかし、近年は上勝町や地元の農協、ベンチャー企業「いろどり」などの努力により、状況は変わりつつあります。「いろどり」はユコウを使った調味料や洋菓子などを開発・販売するなど、地道な普及活動を行い、ユコウの知名度向上に貢献しました。特に、京阪神方面では「ユコウ酢」の需要が伸びており、その存在感を高めています。また、ユコウは病害に強く、枝にトゲがないため収穫が容易なことから、上勝町での生産量は2006年度以降横ばいとなっています。

ユコウの利用法

ユコウは、その強い香りやまろやかな味わいから、主に果汁を採取して加工に利用されます。「ユコウ酢」として販売されるほか、ユズやスチ果汁と合わせてポン酢の原料としても用いられています。上勝町では、家庭料理にも広く活用され、酢飯などに用いられる醸造酢などにも利用されてきました。かつては、収穫後に越年させ、翌春に酸味が抜けて糖度が増した果実をおやつとして食べていた風習もありました。青い実をカワショウブの葉を敷いた土中に埋めて完熟させる方法もあったようです。しかし、2017年時点では、生果の市販はされていません。

ユズとの違い

ユコウはユズと見た目や外皮の色合いが酷似していますが、表面はユズよりも滑らかで、果頂部に油胞がなく、やや凹んでいる点が異なります。

ユコウの未来

ユコウは、その希少性と独特の風味から、新たな可能性を秘めた柑橘類と言えます。地元の取り組みや加工技術の進化により、今後さらにその知名度と需要が高まり、生産量も増加していくことが期待されます。 ユコウ酢や、ユコウを使った様々な加工品が、より多くの人々に愛されるようになることを願っています。旭ポンズのように、複数の柑橘をブレンドした商品開発も期待できます。

もう一度検索