アルタイル

アルタイル（わし座α星）

アルタイル（英: Altair）またはわし座α星は、わし座における最も輝かしい恒星であり、全天で21ある1等星の一つです。この星は、七夕の彦星としても広く知られ、伝説的な存在を持っています。アルタイルは太陽系から約16.7光年（5.13パーセク）の距離にあり、肉眼でも容易に観測できる恒星の一つです。

物理的特性

アルタイルは、質量が太陽の約1.8倍、光度は約11倍であり、A型主系列星に分類されます。その特徴的な点は、非常に高速で自転していることです。自転周期は約9時間であり、比較すると太陽の自転周期は25日以上です。このため、アルタイルは赤道直径が極直径よりも20％以上も長くなり、潰れた形状をしています。

また、1999年の測定によると、アルタイルの明るさはわずかに変動しており、特に短い周期での変光が観測されています。これにより、アルタイルはたて座δ型変光星として分類されたのです。変光は主にコロナの弱いX線放射によるもので、活動が特に激しいのは恒星の赤道近くです。この活動は赤道付近で形成される対流セルの影響であると考えられています。

自転効果

1960年代には、天文学者ロバート・ハンブリー・ブラウンのチームによって、アルタイルの角直径が測定され、その際に自転によって形状が潰れていることが発見されました。続いて、1999年から2000年にかけての干渉測定により、この潰れた形状が確証されました。この研究は、2001年に正式に発表されています。

理論的には、アルタイルの急速な自転により、赤道での重力と温度は低下し、それが明るさの不均一に繋がるという現象も示唆されています。重力減光として知られるこの現象は、2001年の観測によって確認され、その後の研究でも明らかにされています。特に、2005年には新たな測定結果によってこの現象が支持されました。

伴星と名称

アルタイルはWDS 19508+0852Aという番号で知られ、いくつかの伴星が存在します。特に、その周囲にあるいくつかのかすかな星があり、その中にはWDS 19508+0852B、C、Dと名付けられたものがあります。ただし、Bは重力的に結合しているわけではなく、CとDの関係についてはまだ明らかになっていません。

アルタイルという名前は、アラビア語で「飛翔する鷲」を意味し、その語源は「النسر الطائر an-nasr aṭ-ṭā’ir」に由来します。この名称は、国際天文学連合（IAU）によって2016年に公式に承認されました。

日本での名称と文化的背景

日本では、アルタイルは「比古保之（ひこぼし）」と呼ばれ、特に七夕の伝説の一部として位置付けられています。九州地方では「以奴加比保之（いぬかいぼし）」や「いんかいぼし」など、地域ごとに異なる愛称が存在します。これらの名称は、アルタイルが他の恒星とともに特定の姿を形成する様子から来ていると考えられています。

さらに、アルタイルは天の川を挟んで向かい合うこと座のベガ（織姫星）と共に七夕の伝説に登場し、東洋の文化において特別な意味を持っています。一方、西洋占星術ではアルタイルは爬虫類による危害を示すものとして認識されています。

アルタイルはその美しい輝きとともに、科学的観測や文化的伝承の両面から私たちに多くの興味をかき立てる恒星です。

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