アートプロジェクト

アートプロジェクトとは

アートプロジェクトは、1990年代以降の日本で展開されている現代美術の活動を指します。芸術祭、ビエンナーレ、トリエンナーレといった名称で開催されることもあります。近年では、まちづくりの手法としても注目され、行政や地域コミュニティにも受け入れられています。また、若いアーティストにとって重要な発表の場となっており、現代美術の重要な局面を形成しています。

定義

アートプロジェクトの定義は、プロジェクトごとに異なり、その目的や活動内容は多岐にわたります。そのため、明確な定義は難しいとされています。論者によっては、「参加型アートプロジェクト」や「地域型アートプロジェクト」のように、その特徴を冠して呼ばれることもあります。

1990-2000年代の定義の試み

初期のアートプロジェクトに関する議論では、「アート」と「プロジェクト」という言葉を分けて、それぞれの意味を考察する試みが行われました。

1990年代後半に、橋本敏子はアートプロジェクトを「社会とアートの多様な関係を創出しようとする試み」と「表現活動の様々な場面への参加・交流を促す試み」という2つの要素を持つものと定義しました。また、川俣正と桂英史は、アートプロジェクトの特徴を「脱＝作品化」と捉え、「芸術作品」という概念から離れ、表現や制作のプロセスを共有する活動と位置付けました。さらに、彼らは、コミュニティや地域、マイノリティといった社会的文脈への介入を通して表現を行う活動を重視しました。前者を「ワーク・イン・プログレス」、後者を「サイトスペシフィック・アート」と呼んでいます。

村田真は、アートプロジェクトが「美術作品」や「美術展」とほぼ同義に使われる現状に対し、「アート」と「プロジェクト」という言葉の本来の意味に立ち返り再定義を試みました。「アート」を美術よりも広い意味で捉え、「プロジェクト」をプロセスを含む意味で捉えるべきだと主張しました。

2010年代の定義の試み

加治屋健司は、美術史の観点からアートプロジェクトを、作品制作のプロセスを重視し、美術館の外で社会的な文脈と関わる試みと特徴づけました。吉澤弥生は、アートプロジェクトの特徴を「多様な参加者による共同制作」「仮設の作品やワークショップ」「制作プロセスや固有性の重視」とまとめました。

熊倉純子らは、研究会を通して、アートプロジェクトを「作品展示にとどまらず、社会的事象に関わりながら展開される活動」であり、「既存の枠組みとは異なる繋がりを生み出し、新たな芸術的、社会的文脈を創出する活動」と定義しました。宮本結佳は、アートプロジェクトの隆盛の理由を「オフ・ミュージアムの傾向」「地域文化を生かしたまちづくりへの関心の高まり」「地方行政の文化支出の変化」が複合的に作用した結果だと考察しました。

関連語

藤田直哉は、熊倉の定義を踏まえ、地方を舞台としたアートプロジェクトを「地域アート」と表現しました。「地域アート」は、熊倉の定義する「アートプロジェクト」とほぼ同義であると述べています。

関連項目

ビエンナーレ
トリエンナーレ
芸術祭
パブリックアート
コミュニティアート
サイトスペシフィック・アート

外部リンク

アートプロジェクト｜長津 結一郎｜ネットTAM
アート・プロジェクト | 現代美術用語辞典ver.2.0 - Artscape
アサヒ・アート・フェスティバル | 社会貢献活動 | サステナビリティ
Tokyo Art Research Lab

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