イナバウアー

イナバウアーとは

イナバウアーはフィギュアスケートの代表的な技の一つで、選手が足を前後に開き、爪先を180度開いて真横に滑る独特の姿勢を特徴としています。この技の名称は、旧西ドイツのフィギュアスケート選手であるイナ・バウアーに由来し、彼女がこの技を開発したことに由来しています。

技の概要

イナバウアーは、フィギュアスケートにおける「ムーヴズインザフィールド」と呼ばれる要素に属します。これは、選手が特定の姿勢を維持しながら、長い距離または時間を滑走する技法を指します。イナバウアー自体は、「スプレッドイーグル」という技の変形であり、片方の膝を曲げ、他方の足を後方に伸ばす姿勢で滑ることで知られています。

競技者たちは、イナバウアーをさまざまな要素間のつなぎやコレオグラフィック・シークエンスの一部として頻繁に利用していますが、この技自体が競技において単独で求められる技術要素ではありません。

荒川静香とイナバウアー

2006年のトリノオリンピックの女子シングル競技で、荒川静香選手が金メダルを獲得した際に、彼女の得意技であったイナバウアーが観客の心を掴みました。この演技では、荒川選手は上半身を大きく反らせる特徴あるスタイルでイナバウアーを披露し、多くの喝采を浴びました。この功績により、イナバウアーは日本国内での認知度が大幅に向上し、「流行語大賞」にも選出されるほどとなりました。

この演技は「レイバック・イナバウアー」や「サーキュラー・イナバウアー」とも呼ばれ、その名は荒川選手によってさらに広まりました。しかし、彼女の演技を見た人々の中には、背中を反らせながら滑る技として誤解されることもありました。

さらに、著名なロシアの選手であるアリーナ・ザギトワやアリョーナ・コストルナヤもイナバウアーを採用しており、コストルナヤ選手はこの技から2回転アクセルを飛ぶ様子が注目を集めています。

商標登録問題

興味深いことに、2007年にはアサヒビールが「イナバウアー」の商標登録を申請しましたが、特許庁はこの申請を拒否しました。その理由としては、イナ・バウアーの名前を含む技であることや、便乗行為が公序良俗に反するとの判断がありました。この件では、アサヒビールを含めて13社が商標登録を出願したと報じられています。

その他の関連情報

荒川選手のトリノオリンピックの金メダルを記念して、出身校である仙台市立台原小学校に「ヤエベニシダレ」が植樹されました。特にこの桜の木は、荒川選手の得意技であるイナバウアーの姿勢に似ていることから「チェリーバウアー」と呼ばれています。また、スポーツ界では他にも奇妙な関連が見られます。大相撲では、里山が対戦中に伝え反りで勝利した際に体勢がイナバウアーに似ているとして、「イナバウアー」と称されたり、大関琴奨菊の仕切りが「琴バウアー」と呼ばれることがあるなど、イナバウアーの影響は広範に及んでいます。

卓球選手の張本智和も自身の優勝時にイナバウアーと比較され「ハリバウアー」と名付けられるなど、この技の影響は多岐にわたっています。実際のイナバウアーの動きは背中を反らすことが必須ではないため、それに関連する誤解も生じていることがあるのです。

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