イレイザーヘッド
『イレイザーヘッド』（Eraserhead）は、1977年に公開されたアメリカの超現実的なホラー映画です。デヴィッド・リンチが監督・脚本・製作・編集・美術・特殊効果を一人で担当した長編デビュー作であり、カルト映画の代名詞として知られています。モノクロ映像で描かれる不気味な世界観と、難解でシュールなストーリーが特徴です。タイトルの「イレイザーヘッド」は、鉛筆についている消しゴムを指します。
本作は、若き日のデヴィッド・リンチが、少人数のスタッフとともに個人資金を投じ、5年の歳月をかけて完成させました。主演のジャック・ナンスは、製作期間中、4年間髪型を変えなかったというエピソードも残っています。物語は、シュールで難解な展開が続き、観客はまるで夢を見ているかのような感覚に陥ります。ビジュアル面だけでなく、サウンドトラックも独特で、音楽メディアからも高い評価を得ています。1997年には、リンチ自身が音響などをリマスターした「完全版」がビデオで発売されました。
物語は、奇妙な光景から始まります。モジャモジャ頭のヘンリー・スペンサーが寝ている場面をバックに、惑星のようなものが浮かび上がります。その惑星の中の割れた窓の部屋には、皮膚病を患った謎の男がいます。男がレバーを引くと、胎児のような生き物が現れ、水中に落ちていきます。場面は変わり、スペンサーはいつものように着古したスーツを着て、自宅アパートに帰ります。向かいの部屋の女性から、スペンサーの恋人メアリー・エックスの家族が夕食に招待していることを告げられます。メアリーの家を訪れたスペンサーは、彼女の母親から厳しく問い詰められ、気まずい空気の中で食事をすることになります。しかし、そこで出された鶏肉料理はまるで生きているかのように動き、血を吹き出します。恐怖を感じたメアリーと母親は部屋を出てしまいます。
その後、スペンサーはメアリーが未熟児を産んだことを知らされます。その子供は、包帯に包まれた手足のない奇妙な生き物で、いつも甲高い泣き声を上げています。メアリーは子供の世話に耐えられなくなり、家を出てしまいます。一人残されたスペンサーは、赤ん坊の世話をしながら生活を続けます。ある日、スペンサーは赤ん坊の体中に発疹ができていることに気づきます。疲れて横になったスペンサーは、ラジエーターの向こう側に劇場の幻覚を見ます。そこで踊る女性の頭上からは、幼虫のような胎児が落ちてきています。
やがて幻覚から覚めたスペンサーは、メアリーが横に寝ていることに気づきます。身悶えるメアリーから胎児を引っ張り出し、壁に投げつけると血の跡を残します。その後、戸棚から飛び出してきた肉片は、最初の惑星のような場所を這いずり回ります。場面は変わり、スペンサーは隣人の美女と一夜を共にしますが、再びラジエーターの女が現れ、舞台で歌い始めます。スペンサーも舞台に上がりますが、突然頭が落ち、そこから赤ん坊の頭のようなものが出てきます。スペンサーの頭は道路に落下し、少年がそれを工場に持ち込みます。工場では、その髪の毛を刈り、消しゴム付き鉛筆が次々と作られます。そして、スペンサーは目を覚まします。
朝になり、隣には誰もいません。部屋に戻ると、赤ん坊が嘲笑うような声を上げ始めます。スペンサーはハサミで赤ん坊の包帯を切り裂くと、心臓や臓器のようなものがむき出しになっています。スペンサーが心臓にハサミを突き刺すと、部屋の電気がショートし、巨大な赤ん坊の顔が迫ってきます。最後に惑星が現れ、その穴の中に惑星の男がいます。次のショットでスペンサーは霧の中に立っており、ラジエーターの女と抱きしめ合って物語は終わります。
ヘンリー・スペンサー：ジャック・ナンス
メアリー・エックス：シャーロット・スチュアート
ミスター・エックス：アレン・ジョゼフ
ミセス・エックス：ジーン・ベイツ
アパートに住む女：ジュディス・アンナ・ロバーツ
ラジエーターの中の少女：ローレル・ニア
惑星の男 / 窓際の男：ジャック・フィスク
少女：ジェニファー・チェンバース・リンチ
本作に登場する奇形の赤ん坊は、あまりに不気味でリアルなため、議論を呼びました。リンチ監督は、この赤ん坊の正体について一切明かさず、沈黙を守っています。撮影には、様々な困難があり、ドアノブを回して部屋に入るだけのシーンに1年半の歳月を費やしたそうです。撮影場所はカリフォルニアですが、それをわからないように、豪邸と馬小屋を借り切って制作されました。
映画完成後、ニューヨーク映画祭への応募は断られ、最初の公開でも観客はわずか24人でした。しかし、独立系映画館で深夜上映されると、不気味さが際立ち、一部の観客から熱狂的な支持を集め、「ミッドナイト・カルト」と呼ばれるようになりました。上映時には、ショッキングな内容のため、妊婦の鑑賞を控えるよう注意が促されました。
アメリカ国立フィルム登録簿（National Film Registry）登録作品
『ミッドナイトムービー』 - 監督本人による解説
ジョン・ウォーターズ - 映画を絶賛し、宣伝を続けた
ベン・バレンホルツ - 短編映画『アスパラガス』と同時上映
イレイザーヘッド - allcinema
イレイザーヘッド - KINENOTE
Eraserhead - オールムービー（英語）
Eraserhead - IMDb（英語）
概要
本作は、若き日のデヴィッド・リンチが、少人数のスタッフとともに個人資金を投じ、5年の歳月をかけて完成させました。主演のジャック・ナンスは、製作期間中、4年間髪型を変えなかったというエピソードも残っています。物語は、シュールで難解な展開が続き、観客はまるで夢を見ているかのような感覚に陥ります。ビジュアル面だけでなく、サウンドトラックも独特で、音楽メディアからも高い評価を得ています。1997年には、リンチ自身が音響などをリマスターした「完全版」がビデオで発売されました。
ストーリー
物語は、奇妙な光景から始まります。モジャモジャ頭のヘンリー・スペンサーが寝ている場面をバックに、惑星のようなものが浮かび上がります。その惑星の中の割れた窓の部屋には、皮膚病を患った謎の男がいます。男がレバーを引くと、胎児のような生き物が現れ、水中に落ちていきます。場面は変わり、スペンサーはいつものように着古したスーツを着て、自宅アパートに帰ります。向かいの部屋の女性から、スペンサーの恋人メアリー・エックスの家族が夕食に招待していることを告げられます。メアリーの家を訪れたスペンサーは、彼女の母親から厳しく問い詰められ、気まずい空気の中で食事をすることになります。しかし、そこで出された鶏肉料理はまるで生きているかのように動き、血を吹き出します。恐怖を感じたメアリーと母親は部屋を出てしまいます。
その後、スペンサーはメアリーが未熟児を産んだことを知らされます。その子供は、包帯に包まれた手足のない奇妙な生き物で、いつも甲高い泣き声を上げています。メアリーは子供の世話に耐えられなくなり、家を出てしまいます。一人残されたスペンサーは、赤ん坊の世話をしながら生活を続けます。ある日、スペンサーは赤ん坊の体中に発疹ができていることに気づきます。疲れて横になったスペンサーは、ラジエーターの向こう側に劇場の幻覚を見ます。そこで踊る女性の頭上からは、幼虫のような胎児が落ちてきています。
やがて幻覚から覚めたスペンサーは、メアリーが横に寝ていることに気づきます。身悶えるメアリーから胎児を引っ張り出し、壁に投げつけると血の跡を残します。その後、戸棚から飛び出してきた肉片は、最初の惑星のような場所を這いずり回ります。場面は変わり、スペンサーは隣人の美女と一夜を共にしますが、再びラジエーターの女が現れ、舞台で歌い始めます。スペンサーも舞台に上がりますが、突然頭が落ち、そこから赤ん坊の頭のようなものが出てきます。スペンサーの頭は道路に落下し、少年がそれを工場に持ち込みます。工場では、その髪の毛を刈り、消しゴム付き鉛筆が次々と作られます。そして、スペンサーは目を覚まします。
朝になり、隣には誰もいません。部屋に戻ると、赤ん坊が嘲笑うような声を上げ始めます。スペンサーはハサミで赤ん坊の包帯を切り裂くと、心臓や臓器のようなものがむき出しになっています。スペンサーが心臓にハサミを突き刺すと、部屋の電気がショートし、巨大な赤ん坊の顔が迫ってきます。最後に惑星が現れ、その穴の中に惑星の男がいます。次のショットでスペンサーは霧の中に立っており、ラジエーターの女と抱きしめ合って物語は終わります。
キャスト
ヘンリー・スペンサー：ジャック・ナンス
メアリー・エックス：シャーロット・スチュアート
ミスター・エックス：アレン・ジョゼフ
ミセス・エックス：ジーン・ベイツ
アパートに住む女：ジュディス・アンナ・ロバーツ
ラジエーターの中の少女：ローレル・ニア
惑星の男 / 窓際の男：ジャック・フィスク
少女：ジェニファー・チェンバース・リンチ
作品解説
本作に登場する奇形の赤ん坊は、あまりに不気味でリアルなため、議論を呼びました。リンチ監督は、この赤ん坊の正体について一切明かさず、沈黙を守っています。撮影には、様々な困難があり、ドアノブを回して部屋に入るだけのシーンに1年半の歳月を費やしたそうです。撮影場所はカリフォルニアですが、それをわからないように、豪邸と馬小屋を借り切って制作されました。
公開
映画完成後、ニューヨーク映画祭への応募は断られ、最初の公開でも観客はわずか24人でした。しかし、独立系映画館で深夜上映されると、不気味さが際立ち、一部の観客から熱狂的な支持を集め、「ミッドナイト・カルト」と呼ばれるようになりました。上映時には、ショッキングな内容のため、妊婦の鑑賞を控えるよう注意が促されました。
脚注
アメリカ国立フィルム登録簿（National Film Registry）登録作品
関連項目
『ミッドナイトムービー』 - 監督本人による解説
ジョン・ウォーターズ - 映画を絶賛し、宣伝を続けた
ベン・バレンホルツ - 短編映画『アスパラガス』と同時上映
外部リンク
イレイザーヘッド - allcinema
イレイザーヘッド - KINENOTE
Eraserhead - オールムービー（英語）
Eraserhead - IMDb（英語）
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