インスタントコーヒー

インスタントコーヒーとは

インスタントコーヒーは、コーヒー豆から抽出した液体を乾燥させ、粉末状に加工したものです。お湯を注ぐだけで手軽にコーヒーが楽しめるため、忙しい現代人にとって欠かせない存在となっています。別名ソリュブルコーヒーとも呼ばれますが、近年では両者を区別する動きも出てきています。

発明と歴史

インスタントコーヒーの開発は、コーヒーの風味を損なわずに手軽に楽しめるようにするための技術開発の歴史と言えます。

1771年にイギリスで初のインスタントコーヒーが発明されましたが、保存期間が短く普及には至りませんでした。その後も試行錯誤が繰り返され、1889年にはニュージーランドのデイビッド・ストラングが「ソリュブル・コーヒー・パウダー」の特許を取得し、製品化に成功。これが記録に残る最初のインスタントコーヒーと言われています。

さらに、1899年には日本人科学者のカトウ・サトリ博士が、緑茶のインスタント化研究中に揮発性オイルを使ったコーヒー抽出液の真空乾燥技術を発明しました。1901年の博覧会で「ソリュブル・コーヒー」として発表されましたが、商品化には至りませんでした。

1906年には、アメリカのジョージ・コンスタント・ルイス・ワシントンがインスタントコーヒーの製法特許を取得し、「Red E Coffee」として製品化に成功。しかし、ストラングやカトウの製法との関連は不明です。

一般への普及

ワシントンの特許以降、いくつかのメーカーがインスタントコーヒーの製造販売に参入しましたが、中でも大きな成功を収めたのはスイスのネスレでした。1930年代、コーヒー豆の価格暴落に苦しむブラジル政府から余剰豆の加工依頼を受けたネスレは、数年の開発期間を経て、1937年に現在のスプレードライ法に近い製法を完成させました。翌1938年には「ネスカフェ」として発売され、インスタントコーヒーの代名詞として世界中に広まりました。

1960年代には、風味に優れるフリーズドライ製法のインスタントコーヒーがアメリカで登場し、人気を博しました。

日本では、1914年に輸入が開始されましたが、普及には至らず。第二次世界大戦後、1950年代から再び輸入が再開され、1960年に森永製菓が国内生産を開始すると、各社が追随しました。

また、カフェインを除去したカフェインレスの商品も広く販売されています。

製法

インスタントコーヒーの主な製法には、スプレードライ法とフリーズドライ法の2つがあります。

スプレードライ法

高温の乾燥筒の中でコーヒー液を噴霧し、瞬時に乾燥させる方法です。微粉末になり、冷水にも溶けやすいのが特徴ですが、高温で加工するため、香味や酸味が失われやすく、苦味が強調される傾向があります。大量生産に適しており、多くの製品に採用されています。

フリーズドライ法

コーヒー液をマイナス40度以下で凍結させた後、粉砕し、真空下で水分を蒸発させる方法です。粒状で、スプレードライ法に比べて香味の劣化が抑えられますが、生産効率が悪く、高価になる傾向があります。

近年では、エキス抽出液体式という、抽出技術を用いた新しい製法も登場しています。

ネスレ日本の製品呼称変更と業界の動き

日本の公正競争規約では、インスタントコーヒーを「コーヒー豆から得られる抽出液を乾燥させた水溶性の粉状、顆粒状その他の固形状のコーヒー」と定義しています。しかし、コーヒー豆を内包する製品は、レギュラーコーヒーに分類され、「インスタントコーヒー」を名乗ることができません。

そのため、ネスレ日本は「ソリュブルコーヒー」という新しいカテゴリーを提唱し、自社の製品を「レギュラーソリュブルコーヒー」と呼ぶようになりました。しかし、この動きに対し、業界団体は「ドリップコーヒーと誤解される」と反発し、最終的に「インスタントコーヒー（レギュラーコーヒー入り）」と表示すべきと決議しました。

ネスレはこれに反発し、業界団体を脱退。今後は業界に縛られない営業活動を展開していくとしています。

まとめ

インスタントコーヒーは、手軽にコーヒーを楽しめる便利な存在として、私たちの生活に深く浸透しています。その製法や歴史を知ることで、より深く味わうことができるでしょう。また、ソリュブルコーヒーとの違いや、業界の動向にも注目することで、今後のインスタントコーヒーの発展をより楽しむことができるでしょう。

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