ウエスタンアームズ

ウエスタンアームズ：エアソフトガン史に名を刻むメーカー

ウエスタンアームズ株式会社は、東京都渋谷区に本社を置くエアソフトガンメーカーです。1976年、遊戯銃メーカー六研の製品を量産販売することを目的として設立されました。社名は、コルト・シングル・アクション・アーミーなど、西部劇で有名な銃器を製品化する目標に由来しています。

モデルガンからガスガンへ

創業当初は、モデルガン全盛期において六研やMGCといったメーカーと協力関係を築きながら独自の製品も展開していました。しかし、ガスガンの流行を機に、ウエスタンアームズは主軸をガスガンへと移行します。そして、1994年、オートマチックピストルのスライド動作をリアルに再現したブローバックガスガン「ベレッタM92FS」を発表。その洗練された機構と高い作動性から大ヒット商品となり、エアソフトガン業界において確固たる地位を築きました。

マグナブローバック：革新的なブローバック機構

ベレッタM92FSに搭載されたブローバック機構は、公募によって「マグナブローバック」と命名されました。重量のあるスライドが力強く作動する迫力あるアクションは高く評価され、特に海外では、高圧ガスの使用と金属製外装が違法ではないことから絶大な人気を誇ります。その優れた機構は、国内の他社製品にも採用されるほど高い技術力を示しています。ウエスタンアームズのトレードマークである「WA」の文字を鎧兜型にデザインしたロゴも、六研の代表である六人部登氏の作品です。

製品の特徴と進化

ウエスタンアームズは、限定品が多く直営店での販売が中心であるため、全製品を把握することは困難です。主力製品であるブローバックガスガンは、弾丸発射前のスライド動作、外観再現に影響を与えにくい内部構造、重量のある部品の使用などが特徴です。ヘビーウェイト樹脂の使用による重量感、実銃メーカーからの商標・意匠使用によるリアルな再現性も魅力です。ベレッタ社の商標に関しては、独占使用権を有することを強くアピールしています。

一方で、実銃には存在しないパテント関連の刻印や、金属パーツの仕上げの粗さといった批判もあります。特に近距離での命中精度は高いものの、遠距離では精度が低下する傾向があり、これはパッキンの抵抗のバラツキや複雑なホップアップ機構に起因します。そのため、現行モデルでは固定ホップに変更されています。また、ダブルカラム式の拳銃など、大型の弾倉を持つ製品には「NLS」機構を搭載。これは、ガスタンク内に液化ガスが侵入しないスペースを設けることで、激しい動きの中でも安定した射撃を可能にする機構です。

2003年にはハンマーシステムやホップアップシステムを改良した「SCW Ver1」シリーズ、2006年には海外生産による低価格化モデル「マグナテック」シリーズが登場しました。しかし、「ヘビーウェイトではないWA製品は存在意義がない」という声を受け、高級路線へと移行した後、現在は従来路線に統合されています。2008年には大型商品「M4 CQB-R」を発表し、国内外でヒット商品となりました。

知的財産権訴訟

1990年代後半、ウエスタンアームズは多数の訴訟を起こしました。カスタムパーツメーカーに対する訴訟では、工業デザインの模倣を主張しましたが、実銃を模倣した基本構造や一般的な機械構造であるとの判断により敗訴しました。この訴訟は、法に抵触する金属化や部品組み込みによる強度・機能低下を防ぐ目的もあったと推測されています。

また、他社のブローバックガスガンに対する訴訟でも、ほとんど敗訴しています。マルゼン社に対してのみ勝訴した事例がありますが、これは特許の拡大解釈や裁判官への印象といった要素も影響したと指摘されています。ベレッタ社の商標使用権を巡る訴訟でも、玩具・模型における商標模倣はベレッタ社の販売に損害を与えないとの判断により敗訴しました。商標無断使用や、関係の良好なメーカーへの訴訟回避などが影響したと考えられています。

まとめ

ウエスタンアームズは、ブローバックガスガン技術の革新と、エアソフトガン業界への多大な貢献、そして数々の訴訟を通して、エアソフトガン史に大きな足跡を残したメーカーと言えるでしょう。その製品は高い完成度と独自性を持ち、多くのファンを魅了し続けています。しかし、知的財産権をめぐる訴訟の歴史は、メーカーの成長と同時に、業界全体の課題についても示唆しています。

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