エイズ

エイズ（Ayds）についての詳細

エイズ（Ayds）は、1970年代から1980年代初頭にかけてアメリカで流行したダイエットキャンディで、食欲を抑えるための製品として位置付けられていました。この商品名は、同じ発音の「AIDS」(後天性免疫不全症候群)と混同されることになり、商品自身だけでなく、それが持つ名にも注目が集まりました。エイズは、シカゴのカーレイ・カンパニーが1937年に発表し、1946年に商標登録をしてから広がりをみせました。その後、同社は様々な企業に吸収されていきましたが、その間もエイズのダイエット効果を謳う広告が数多く展開されていました。

成分とフレーバー

エイズには、チョコレート、チョコミント、バタースコッチ、キャラメル、そしてピーナッツバターなど多彩なフレーバーがありました。キャンディのパッケージには「Ayds Reducing Plan vitamin and mineral Candy」との記載があり、後に「appetite suppressant candy」という表現に変更されました。有効成分としては、最初はベンゾカインが使用されていましたが、のちにフェニルプロパノールアミンに切り替わりました。この成分は味覚を鈍らせ、食欲を抑えるとされていました。

1944年には、連邦取引委員会が「ダイエットもエクササイズもなしで、5日で10ポンド〔約4.5キロ〕痩せる」という広告を問題視し、その影響を受ける形で製品の評価は徐々に変わり始めました。

歴史的背景と経営動向

エイズは元々カーレイ・カンパニーによって製造されていましたが、同社は後にカンパーナ・コーポレーションの一部門として吸収されました。このカンパーナは、その後ダウ・ケミカルによって買収されるまでに多くの経営変動を経験しました。社長のアーヴィング・ウィラード・クラルは、エイズのプロモーションのためにハリウッドの有名人を多く起用し、広告キャンペーンを行いました。

1956年には、コスモポリタンの雑誌でも、クラルがセレブを利用してダイエット商品のプロモーションを行っている事が取り上げられ、話題を呼びました。このようにしてエイズは人気を博しましたが、その後1981年にピュレックス社に名前の権利が譲渡されました。

AIDSとの関係

1980年代に入ると、後天性免疫不全症候群であるAIDSの問題が社会にクローズアップされ、同じ発音であるエイズは新たな悪名を得ることになりました。AIDS患者は急激な体重減少が見られるため、ダイエットキャンディとしてのイメージが損なわれることが懸念されましたが、当初は逆に売り上げが増加していました。

1986年には、売上減少を受け、「名前を変えるべきでは」という意見が出るほど、商品への影響が色濃くなりました。1988年にはデップ・コーポレーションがさらに新たな名前を模索することを発表し、エイズの製品は大きな歴史的転換期を迎えました。社会的な意識の変化が、当時の人気ダイエットキャンディに影を落とすこととなったのです。

結論

エイズは、その名称が深い社会的背景を有することから、歴史的にも複雑な経緯をたどりました。ダイエットという目的のもとに多くの人々に果たされた役割と、その後の名称変更の動きは、商品そのものの流行の歴史を超えて、消費者や社会にとっての重要な教訓として語り継がれています。

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