オオフウチョウ

オオフウチョウ (大風鳥)

スズメ目に属するフウチョウ科の一種で、学名は Paradisaea apoda といいます。この名は「無脚の楽園」を意味し、後述する歴史的な経緯に由来します。その圧倒的な羽の美しさから、しばしば「ゴクラクチョウ（極楽鳥）」の別名で親しまれており、フウチョウ科の代表的な存在として認知されています。

形態

成鳥のサイズは、オスの特徴的な飾り羽を除いた体長で約40センチメートルから50センチメートルに達します。メスは全身が地味な茶色の羽毛に覆われているのに対し、オスは頭部が鮮やかな色彩を呈し、特に脇腹からは長く豊かな黄金色の飾り羽が生えているのが最大の特徴です。この飾り羽は求愛行動において重要な役割を果たします。

分布

主にパプアニューギニアやニューギニア島、およびインドネシアに属するアルー諸島といった、熱帯の森林地帯に生息しています。

生態

オオフウチョウ、特にオスは、その豪華な飾り羽を用いた求愛ディスプレイで有名です。繁殖期を迎えると、数羽のオスが特定の木の枝に集結し、一種の集団求愛場（レック）を形成します。オスたちはそこで、輝くような飾り羽を大きく広げ、独特の鳴き声を発しながら枝の上を跳ね回るなど、複雑なダンスを披露することでメスを引きつけようとします。

人間との関わり

オオフウチョウがヨーロッパに初めて紹介されたのは16世紀、探検家フェルディナンド・マゼランの一行が持ち帰った標本がきっかけでした。当時、標本は輸送の便宜のために脚を切り落とされた状態で梱包されており、これを目にした人々は「この鳥は生涯飛び続けるため脚がないのではないか」と推測し、「楽園に住む鳥」（Bird of paradise）という伝説を生みました。これが、「極楽鳥」という和名や、学名に含まれる「無脚の楽園」という意味の由来となっています。

その美しい飾り羽は、装飾品として非常に高く評価され、残念ながら多くのフウチョウ類が乱獲される原因となりました。

近代においては、進化論で名高いチャールズ・ダーウィンの共同研究者としても知られる19世紀の博物学者、アルフレッド・ラッセル・ウォレスが、ニューギニア地方のアルー諸島で、繁殖期に集まって求愛ダンスを行う生きたオオフウチョウの群れを観察しました。彼は生きた状態のオオフウチョウを観察した最初の西洋人であるとされています。彼の観察記録は、この神秘的な鳥の生態を知る上で貴重な情報を提供しました。

オオフウチョウは、その息をのむような美しさと独特の生態、そして人間との歴史的な関わりにおいて、多くの人々を魅了し続けています。

もう一度検索