オリンポス

オリンポス（Olympus）

「オリンポス（Olympus）」という名称は、主に古代ギリシャにおいて神々が住まう聖なる山として崇められた存在に由来しています。この言葉は、時を経てギリシャ国内や世界の他の地域に存在する同名の山々、神話上の神々の集合体、古代の都市、さらには近代以降に設立された企業の名前、開発された製品、生み出された文化作品のタイトルなど、極めて多様な事物を指し示すために用いられています。カタカナ表記としては、「オリンポス」のほか、「オリンパス」「オリムパス」といった揺れが見られ、それぞれが特定の対象を指す固有名詞として定着しています。本項目では、これらの言葉が指しうる主な対象について解説します。

ギリシャのオリンポス山とその由来

最も原初的な「オリンポス」は、ギリシャ本土に位置する標高約2,917メートルの山を指します。これはギリシャ最高峰であり、古くから峻厳なその姿から、天空を司る神々が住まう場所、特に主神ゼウスをはじめとする主要な神々（オリュンポス十二神）の宮殿があると信じられてきました。そのため、この山は単なる地理的な存在に留まらず、古代ギリシャの宗教観や世界観において極めて重要な意味合いを持つ聖地でした。現代においても、自然公園として保護され、ユネスコの世界遺産にも登録されるなど、その歴史的・文化的重要性は高く評価されています。なお、「オリンポス山」という名称は、ギリシャ国外の山岳や、さらには太陽系内の他の天体（火星の巨大火山オリンポス山など）にも名付けられており、特定の山岳を指す場合は文脈による確認が必要です。この多義性のため、「オリンポス山 (曖昧さ回避)」という項目が設けられることもあります。

オリュンポス十二神

ギリシャ神話における最高位の神々の集まりを指す言葉です。ゼウス、ヘラ、ポセイドン、アテナ、アポロン、アルテミス、アレス、アフロディテ、ヘルメス、ヘパイストス、デメテル、そしてヘスティア（またはディオニュソス）などが含まれます。彼らは、聖なる山であるオリンポス山に宮殿を構え、そこから人間界や他の神々を支配していると信じられていました。その名称は、彼らが住まうとされるオリンポス山に由来しています。

オリンポス (古代都市)

現在のトルコ共和国南西部のリュキア地方にかつて存在した古代都市の名称です。地中海に面した美しい海岸沿いに紀元前3世紀頃に建設され、良港を擁する都市として発展しました。特にヘレニズム時代からローマ帝国時代にかけては交易などで栄えましたが、やがて衰退し、現在は古代遺跡としてその名残をとどめています。この古代都市の名称もまた、神話上のオリンポス山に関連付けられて名付けられた可能性が高いと考えられています。

近現代における「オリンパス」「オリムパス」

「オリンパス」や「オリムパス」といった名称は、近代以降、特に日本の企業名や製品名として広く用いられています。

オリンパス株式会社: 東京都新宿区に本社を置く、日本の大手光学機器・電子機器メーカーです。1919年に顕微鏡メーカーとして創業以来、カメラ、医療用内視鏡、産業用検査機器など、幅広い分野で精密な光学技術やデジタル技術を活かした製品を生み出しています。特に医療分野における消化器内視鏡は世界的なシェアを誇り、その技術力で知られています。企業名には、光学機器の分野で世界の頂点を目指すという志が込められていると言われています。
オリムパス製絲株式会社: 愛知県名古屋市に本社を置く、日本の老舗糸メーカーです。主に手編み糸や刺繍糸、レース糸といった手芸用品や、産業用の縫製糸などを製造・販売しており、「オリムパス」ブランドとして手芸愛好家に長く親しまれています。
オリンパス (輸送用機器): かつて片山産業株式会社（現在のヤマハ発動機の一部門に連なる）が製造・販売していたオートバイのブランド名です。第二次世界大戦後の復興期にあたる1947年に事業が開始されましたが、市場競争の激化などもあり、1963年にはオートバイ製造から撤退しました。比較的に短い期間存在したブランドです。

その他の著名な用例

ロールス・ロイスオリンパス: イギリスの著名な航空機エンジンメーカー、ロールス・ロイスが開発・製造したターボジェットエンジンシリーズの名称です。特に超音速旅客機コンコルドに搭載されたエンジンとして知られており、その強力な推進力と革新的な技術から「オリンパス」の名が冠されました。
* オリンポス (漫画): 2009年に日本の漫画雑誌『コミックZERO-SUM』に掲載された、三月病先生によるファンタジー漫画作品のタイトルです。神話の世界観や登場人物にインスパイアされた作品であり、文化作品における「オリンポス」の用例の一つと言えます。

このように、「オリンポス」「オリンパス」「オリムパス」という言葉は、古代の神話や地理に根差しつつも、現代においては極めて多岐にわたる分野で用いられる、豊かな意味合いを持つ名称となっています。

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