カヤノヒメ

カヤノヒメ：草を司る神

カヤノヒメは、日本神話に登場する草の神です。『古事記』では鹿屋野比売神（かやのひめのかみ）、『日本書紀』では草祖草野姫（くさのおやかやのひめ）と表記されます。『古事記』には、別名として野椎神（のづちのかみ）という記述も見られます。

神話における記述

カヤノヒメは、神産みの段において伊邪那岐命（いざなぎのみこと）と伊邪那美命（いざなみのみこと）の間に生まれたとされています。

『古事記』によると、カヤノヒメは山の神である大山津見神（おおやまつみのかみ）との間に、4対8柱もの神々を生み出しました。このことから、カヤノヒメが自然の豊穣を司る神として重要な役割を担っていたことがうかがえます。

神名の由来

カヤノヒメの神名にある「カヤ」は、文字通り萱（かや）を意味します。萱は、古くから屋根を葺く材料として利用されるなど、人々の生活に密接に関わってきた植物です。そのため、カヤノヒメは、人々の生活を支える萱の霊として、草の神という名を与えられたと考えられます。

また、別名である「ノヅチ（野槌）」は、「野の精霊（野つ霊）」という意味合いを持ちます。この名からも、カヤノヒメが野に宿る精霊、自然そのものを神格化した存在として崇められていたことが分かります。

祀られる神社

カヤノヒメは、以下の神社で祀られています。

樽前山神社（北海道苫小牧市）: 山の神である大山祇神、木の神である句句廼馳（くくのち）と共に祀られています。自然を司る神々として、人々の信仰を集めています。
萱津神社（愛知県あま市）: 日本で唯一の漬物の神として祀られています。漬物は、野菜を保存するための知恵であり、食文化を支える重要な要素です。カヤノヒメは、食の恵みをもたらす神としても崇められています。
清野井庭神社（三重県伊勢市）: 灌漑用水の神として、または屋船の神の分霊として祀られています。農業用水は、稲作を行う上で必要不可欠なものです。カヤノヒメは、農業の守り神としても信仰されています。

まとめ

カヤノヒメは、草の神として、人々の生活に密接に関わってきた植物、自然の恵みを象徴する存在です。彼女は、自然への感謝の念、豊穣への祈りを体現する神として、今もなお各地の神社で祀られています。

参考文献

『お伊勢さん125社めぐり』別冊『伊勢人』、伊勢文化舎、平成20年12月23日、151p. ISBN 978-4-900759-37-4

関連項目

日本の神の一覧
神産み

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