ガッシュ

ガッシュ絵具：歴史、特徴、種類、そして扱い方

ガッシュは、不透明水彩絵具の一種です。顔料をアラビアガムの水溶液で練り上げたもので、その名の由来はイタリア語の「Guazzo」（水溜り、不透明水彩技法）からきているといわれています。かつては絵具というよりは、不透明水彩画の技法全般を指す言葉でした。

歴史：中世から現代へ

透明水彩が産業革命後にイギリスを中心に発展したのに対し、ガッシュはそれ以前からヨーロッパ大陸で広く用いられていました。中世の装飾本の挿絵の彩色などに用いられたことが知られています。産業革命以前は、屈折率の低い微粒子の顔料が限られていたため、水彩絵具は自然と不透明性が高い傾向がありました。

現代のガッシュは、イギリスのウィンザー＆ニュートン社が、グリセリンや新しい顔料を用いて開発した水彩絵具の発展に大きく負っています。彼らは、従来の水彩絵具の特性を改良し、より鮮やかで、隠蔽力の高いガッシュを生み出しました。

特徴：乾燥時間、重ね塗り、耐久性

ガッシュ絵具の大きな特徴は、水分が蒸発すると塗膜が固まるため、乾燥が早いことです。また、重ね塗りも可能です。ただし、デザイン用途向けに作られた製品の中には、鮮やかさと隠蔽力に重点を置いた設計になっているため、耐久性に劣るものもあります。作品制作に用いる際は、絵具の耐久性を確認することが大切です。

ガッシュの品質規格は、国によって異なります。日本では特に国内規格はありませんが、米国ではASTMインターナショナルの画材部会が専門家用ガッシュ絵具の品質規格を定めています。

日本では、小中学校で用いられる不透明水彩絵具を「ガッシュ」と呼ぶことがありますが、これは透明水彩技法が小学生には難しいこと、完全な不透明水彩では表現できる技法が限られることから、その中間的な性能を持つように作られたものです。「マット水彩」と呼ばれることもあります。本来のガッシュとは区別する必要があります。また、学童用として安価に作られているため、耐久性に問題のあるものもあり、美術作品には向かない場合があります。ポスターカラーもガッシュの一種とされています。

下地：紙と色のついた紙

従来のガッシュは、水溶性で再可溶性のあるアラビアガム等の樹脂溶液を使用しています。そのため、水彩紙やケント紙などの紙を支持体とし、直接紙に描くのが一般的です。色のついた紙を用いることも可能です。

まとめ

ガッシュは、その歴史、特性、用途の広さから、水彩画やデザインなど、幅広い表現方法に使用できる魅力的な絵具です。しかし、耐久性や品質にはばらつきがあるため、使用する際には注意深く選ぶことが重要です。 使用する用途や作品の長期間保存などを考慮し、適切なガッシュ絵具を選びましょう。 また、小中学校で用いられる不透明水彩絵具と、美術作品などに用いられる本格的なガッシュ絵具は区別して考える必要があります。

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