キチョウ

キチョウ（黄蝶）

キチョウ（学名：Eurema hecabe）は、シロチョウ科に属するチョウの一種で、日本を含む世界各地に広く分布しています。その鮮やかな黄色い翅は、草原や道端でよく目立ち、私たちにとって身近な存在です。

形態・生態

キチョウの翅の長さは20mmから27mm程度で、モンキチョウよりもやや小ぶりです。翅の色は黄色で、オスの方がメスよりも色が濃い傾向にあります。翅の外縁には黒い縁取りがあり、裏面には褐色の斑点が見られます。季節によって形態が異なり、夏型は黒い縁取りが広く、秋型は縁取りが狭いか、ほとんどないのが特徴です。

キチョウは年に5、6回発生し、成虫で越冬します。早春から活発に飛び回り、繁殖活動を行います。メスは幼虫の食草となる植物の若葉や新芽に、1つずつ丁寧に卵を産み付けます。卵は乳白色で、孵化が近づくと黄色がかったクリーム色に変化します。卵の形状は紡錘形で、表面には縦方向に細かい条線が走っています。

幼虫は、ネムノキやハギ類などのマメ科植物を食草とします。

分布

キチョウは、アフリカ中部以南、インド、東南アジア、オーストラリアなど、世界的に広い範囲に分布しています。地域によって様々な亜種が存在します。日本国内では、本州、四国、九州、南西諸島に分布しています。

近縁種

キチョウには、いくつかの近縁種が存在します。

ツマグロキチョウ (Eurema laeta):
インドから東南アジア、オーストラリアにかけて分布。日本では、本州、四国、九州に生息していましたが、近年激減しており、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧II類に指定されています。
タイワンキチョウ (Eurema blanda):
東南アジアに広く分布し、日本では八重山諸島に生息しています。
ホシボシキチョウ (Eurema brigitta):
東南アジアやオーストラリアに分布し、日本では迷蝶として記録されることがあります。対馬などでは繁殖例も報告されています。
ウスイロキチョウ (Eurema andersonii):
東南アジア原産。
エサキキチョウ (Eurema alitha zita):
東南アジア原産。別名アリタキチョウ。

キチョウとキタキチョウ

かつては「キチョウ」として一括りにされていたものが、現在ではキチョウ（ミナミキチョウ）とキタキチョウの2種に分けられています。キチョウは主に奄美群島以南の南西諸島に分布し、キタキチョウは岩手県、秋田県以南の本州から南西諸島に分布しています。しかし、外見での識別は非常に困難です。

参考文献

加藤義臣、矢田脩「西南日本および台湾におけるキチョウ2型の地理的分布とその分類学的位置」『蝶と蛾』第56巻第3号、日本鱗翅学会、2005年、171-183頁。
日本チョウ類保全協会編『フィールドガイド日本のチョウ』誠文堂新光社、2012年、72-75頁。

関連項目

日本のチョウ
モンキチョウ

外部リンク

キチョウ - 幼虫図鑑 (群馬大学社会情報学部)

もう一度検索