ギャルマト・ボグダン

東映アニメーション所属のプロデューサー、ギャルマト・ボグダン氏は、1968年12月30日にルーマニアの首都ブカレストで生を受けた。ハンガリー人の父とルーマニア人の母を持つ彼は、二つの国の文化的な背景を併せ持つ二重国籍者である。

首都ブカレストで少年時代を過ごした彼は、幼い頃、東欧に少しずつ浸透し始めた西側の文化に触れる中で、特に日本のテレビアニメに強い関心を抱いた。その中でも、『カリメロ』や『シンドバッドの冒険』といった作品に夢中になったという。

ブカレスト大学で比較文化論を専攻し、知的な探求を深めた彼は、1989年に起こったルーマニア革命に身を投じ、ニコラエ・チャウシェスク政権の打倒という歴史的な変革の一翼を担った。しかし、革命後の混乱の中で「危険人物」と見なされ、当局から監視される立場となり、祖国ルーマニアを離れることを余儀なくされる。彼は父の祖国であるハンガリーへと移り住んだ。

ハンガリーの首都ブダペストに移った後、ブダペスト大学で日本文化の研究に励んだ。そして1992年春、留学生制度を利用して念願の日本への移住を実現する。千葉大学に進学し、大学院を含む7年間、日本の文化や工芸について深く学びを追求した。

日本での生活の中で、1998年にはスポーツジャーナリストとして知られる小松成美氏と結婚する。学業を終えた後、芸能プロダクションなどで通訳や翻訳家として活動し、様々な分野でその語学力と異文化理解を発揮した。転機が訪れたのは2006年。あるパーティーで東映アニメーションのプロデューサー、清水慎治氏と出会い、アニメ業界への道を誘われる。当初はアルバイトとして同社に入ることとなった。

東映アニメーションに入った後、彼はアニメの企画立案にも積極的に取り組み、何度も提出した企画の一つが認められる。その企画は『はたらキッズ マイハム組』として結実し、2007年秋にテレビアニメ化された。この実績が認められ、2008年には東映アニメーションに正式に入社し、プロデューサーとしてのキャリアを本格的にスタートさせた。

卓越した語学能力も彼の大きな強みである。日本語、ドイツ語、英語、フランス語など、7カ国語を操る。この能力は、特に国際的なプロジェクトで活かされており、『映画 ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』製作時のパリでの現地取材においては、現場責任者として、複雑な交渉を取り仕切るなど、重要な役割を果たした。

『はたらキッズ マイハム組』を手がけた後、プロデューサーとして『マリー&ガリー』、『探検ドリランド』、『暴れん坊力士!!松太郎』といったテレビシリーズ、さらに手塚治虫原作の『BUDDHA2 手塚治虫のブッダ -終わりなき旅』のような劇場作品にも携わった。また、人気シリーズである「プリキュア」にも深く関わり、『映画 ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』や『映画 プリキュアオールスターズ 春のカーニバル♪』といった劇場版、そして『タイガーマスクW』など、多岐にわたるジャンルの作品を世に送り出している。

アニメプロデューサーとしての活動の傍ら、雑誌『WiLL』において『世界の常識を疑え』という連載を持ち、独自の視点からの論考を発表するなど、幅広い活動を行っている。激動の時代を生き抜き、培われた国際的な視野と語学力を活かし、日本のアニメーション文化を国内外に発信する重要な役割を担っている人物である。

もう一度検索