クリフォト

クリフォト（Qliphoth）の概要

クリフォトはユダヤ神秘主義のカバラにおいて、悪の力や不均衡な力を表す重要な概念です。この用語はヘブライ語の「皮」や「殻」を意味する「クリファ」（qlipha）の複数形で、13世紀のカバラ文献『ゾーハル』で初めて取り上げられました。これによると、太陽と月が分かれて、月が内なる光を隠すために上下の殻で覆われたのがクリフォトの由来とされています。

クリフォトの解釈

16世紀のカバリスト、アイザック・ルリアはクリフォトを聖性を隠す殻として考え、偶像崇拝など悪とされる行為と同等のものだと位置づけました。その後、20世紀に入ると、非ユダヤ人によるヘルメティックカバラの影響でクリフォトは悪魔と結びつけられるようになりました。特にアレイスター・クロウリーはクリフォトに関連する悪魔の名前を挙げ、「クリフォトの騎士団」と呼び、イスラエル・リガルディーもリリスやサマエルをクリフォトの要素として取り上げています。

クリフォトの図式化

ヘルメティックカバラにおいて、クリフォトは「邪悪の樹」あるいは「死の樹」として図式化され、セフィロトを上下反転させた形で描かれます。ウイリアム・G・グレイはこの「邪悪の樹」を用いて、各球体に悪徳を割り当てています。

• - 暗闇（0）
• - 無神論（1）
• - 愚鈍（2）
• - 反感（3）
• - 無知の深淵（4）
• - 無感動（5）
• - 残酷（6）
• - 醜悪（7）
• - 色欲（8）
• - 強欲（9）
• - 不安定（10）
• - 物質主義（11）

このように、クリフォトは魔術的な力が悪方向に作用する場合の象徴としても捉えられています。

セトのトンネルと闇の側

アレイスター・クロウリーの秘書であったイギリスのオカルティスト、ケネス・グラントは著書『Nightside of Eden』で生命の樹の暗い側面を探求しました。ここでは「セトのトンネル」と呼ばれる概念が紹介されています。これは生命の樹の22の径に対応するクリフォトの闇のネットワークを示しており、クリフォトが単なる邪悪ではなく、通常の現実の裏に隠れた別の次元であることが述べられています。グラントはこの視点を元に、無意識の領域や先祖返り的な側面を強調しました。

日本におけるクリフォトの理解

日本においては、クリフォトに関連する情報が多く紹介され、魔術の分野で特に影響を与えています。黒野忍は、ウイリアム・G・グレイの「邪悪の樹」に対し、日本での誤った解釈や翻訳に関して指摘しています。また、魔術学院I∴O∴S∴の主任もこのモデルを用いており、詳細な調査が行われています。

クリフォトと悪魔の関連

クリフォトは悪魔や悪徳と深く結びついており、オカルティストたちによって悪魔的な力の象徴としても扱われています。特に、各悪魔が特定の悪徳に対応する部分などは、魔術の実践者にとって重要な要素となっています。また、さまざまな著者による異なる解釈や視点が存在し、それぞれがカバラ的な知識にもとづく独自の妖しい世界を形成しています。

まとめ

クリフォトは単なる悪の象徴ではなく、深い哲学的・心理的な解釈が存在するカバラの重要な部分です。悪とされる力がどのように人間の意思や信仰に影響を与えるかを考えさせる複雑なテーマであり、魔術やオカルトの分野においてもその重要性は増しています。この概念は、古代から現代にわたる多様な解釈をもって人々の関心を引き続けています。

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