クロサイ

クロサイ：2本の角を持つアフリカの巨獣

クロサイ( Diceros bicornis)は、アフリカに生息するサイの一種です。サイ科クロサイ属に分類され、現存するクロサイ属の唯一の種となっています。その名前の通り、2本の角を持つことが最大の特徴です。

分布と生息地

かつてはアフリカ大陸の広い範囲に生息していましたが、現在ではアンゴラ、ケニア、ジンバブエ、タンザニア、ナミビア、南アフリカ共和国、モザンビークなどに分布が限られています。エチオピアやカメルーン、チャドなどでは絶滅したと考えられており、一方で、エスワティニ、ザンビア、ボツワナ、マラウイ、ルワンダなどでは再導入が進められています。模式標本の産地は喜望峰です。

形態

クロサイは、体長2.8～2.9メートル、尾長60センチメートル、肩高1.32～1.8メートル、体重350～1300キログラムに達します。メスはオスよりもやや小型です。体色は灰色や灰褐色で、生息環境によって変化します。名前の由来は、シロサイと対比してつけられたものであり、必ずしも体が黒いわけではありません。

特徴的なのは、2本の角です。前角は42～135センチメートル、後角は20～50センチメートルと個体差があります。稀に、3本目の小さな角を持つ個体もいます。耳は長く筒状で、吻端は尖っており、上唇はよく動きます。これにより、木の葉を効率よく食べることができます。門歯はありません。

新生児の体重は22～45キログラムです。

分類

IUCN(2012)の分類によると、クロサイには以下の亜種が知られています。

Diceros bicornis bicornis：アンゴラ南部、ナミビア、ボツワナ西部、南アフリカ共和国南東部および南西部
Diceros bicornis longipes（絶滅亜種）：チャド
Diceros bicornis michaeli：エチオピア、ケニア、ソマリア、タンザニア中北部、南スーダン
Diceros bicornis minor：ザンビア、ジンバブエ、タンザニア南部、南アフリカ共和国北東部、モザンビーク

生態

クロサイは藪地や山地の森林などに生息し、薄明薄暮性です。昼間は木陰で休むことが多いです。通常は単独で生活しますが、かつては小規模な群れを形成することもありました。水浴びや砂浴び、泥浴びを好む習性があり、これは体温調節や寄生虫駆除に役立っています。危険を感じると、時速50キロメートルもの速さで突進して威嚇します。

主な食物は低木の葉ですが、乾季には草本も食べます。ウシツツキ類などの鳥類と共生関係にあり、外部寄生虫の除去や危険を知らせる役割を果たしています。

幼獣の捕食者としては、ブチハイエナやライオンが挙げられます。ライオンは成獣を襲うこともあります。交尾は季節を問わず行われますが、出産は雨季の終わりに行われることが多いです。妊娠期間は約465日、1回に1頭の幼獣を産みます。授乳期間は約1年間ですが、幼獣は次の幼獣が生まれるまで母親と一緒に生活します。オスは7～8歳、メスは5～7歳で性成熟し、寿命は40年以上と考えられています。

人間との関係

クロサイの角は、医学的な根拠がないにもかかわらず、漢方薬として信じられており、また、装飾品としても利用されてきました。そのため、長年にわたる密猟により、生息数は激減しました。主な消費国はアジア諸国です。

1975年にワシントン条約附属書IIに、1977年には附属書Iに掲載され、国際的な保護が進められています。1960年には10万頭と推定されていた生息数は、1996年には2408頭にまで減少しました。しかし、近年の保護活動により、生息数は徐々に回復傾向にあり、2018年には5630頭にまで増加しました。それでも、密猟の脅威は依然として存在し、クロサイの未来は決して安泰ではありません。

飼育

日本においても、1933年に初めてクロサイが紹介されて以来、各地の動物園で飼育が行われています。繁殖にも成功しており、飼育下での最高齢は52歳に達しています。しかし、日本ではクロサイは特定動物に指定され、愛玩目的での飼育は禁止されています。世界中の動物園では、飼育下繁殖や個体交換を通して個体数増加の努力が続けられています。

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