クジョー

『クジョー』（Cujo）は、1983年にアメリカ合衆国で公開されたホラー映画である。現代ホラーの大家であるスティーヴン・キングの小説『クージョ』を原作としている。

作品概要と制作背景

本作は1983年に封切られたスティーヴン・キング原作の映画作品群の第一弾にあたる。同年には、デヴィッド・クローネンバーグ監督による『デッドゾーン』や、ジョン・カーペンター監督の『クリスティーン』も公開されており、キング原作映画にとって特筆すべき年となった。当初、監督としては『アリゲーター』で知られるルイス・ティーグがキングから推薦されていたが、一度は1980年のホラー映画『チェンジリング』を手がけたピーター・メダックに決定した。しかし、メダックがわずか一日で降板したため、最終的にキングが推していたティーグが監督の座に就くこととなった。

監督に就任したティーグをはじめとする制作陣は、脚本の再検討を行い、特に物語の結末を原作から変更し、ハッピーエンドに変更することを決定した。この改変は原作の趣旨とは異なるものだったが、原作者であるキング自身はこれに賛成している。その背景には、映画という媒体における文法と小説のそれとの違いを理解していたことに加え、キング自身が原作の悲劇的な結末を書き直したいという思いを抱いていたという事情があった。撮影においては、凶暴化した主人公の犬「クジョー」を演じるため、五頭ものセント・バーナード犬が準備され、さらに狂犬病の発作による迫力をクローズアップで表現するために、メカニカルヘッド（機械仕掛けの頭部）も駆使された。劇場公開においては、米国では夏休み映画として封切られ、低予算ながら一定の成功を収めた。しかし、翌年に日本で公開された際には、わずか一週間で上映が打ち切られるという結果に終わっている。近年では、2015年に『C.U.J.O』という新たなタイトルでの再映画化企画が持ち上がったことも報じられている。

物語（あらすじ）

物語は、自動車修理工であるジョー・キャンバーに飼われている温厚なセント・バーナード犬「クジョー」の身に起こる悲劇から始まる。森の中で遊びまわっていたクジョーは、コウモリに噛まれたことが原因で狂犬病に感染してしまう。病が進行し、凶暴性と狂気を帯びたクジョーは、最初に飼い主であるジョーを襲い、その命を奪う。時を同じくして、故障した車を修理するため、ジョーの修理工場を訪れたドナ・トレントンとその幼い息子タッドは、そこで恐ろしい光景に遭遇し、狂暴化したクジョーに襲われる。彼らは何とか動かなくなった車の中に避難するが、クジョーはその場を離れようとせず、母子はその中に閉じ込められてしまう。

ドナは何度か外部へ助けを求めようと車からの脱出を試みるが、その都度クジョーに阻まれ失敗に終わる。母子は灼熱の車内で、クジョーの脅威に晒されながら一晩を過ごすこととなる。翌日、ドナと連絡が取れず心配になった夫のヴィックは、警察に捜索を依頼する。依頼を受けた保安官が修理工場へと向かうが、待ち構えていたクジョーによって殺害されてしまう。炎天下の車中でタッドは脱水症状を起こし、母子の命が危険な状態に陥る。一刻の猶予もないと判断したドナは、車内にあったバットを手に、クジョーに立ち向かう決意をする。バットでクジョーを一時的に怯ませたかに見えたドナだったが、再び追い詰められる絶体絶命の危機に瀕する。しかし、ドナは保安官が持っていた拳銃を見つけ、それを使ってクジョーを射殺することに成功する。激しい恐怖と戦いを乗り越えたドナとタッドは、駆け付けたヴィックによって無事救出され、タッドも一命を取り留めるのであった。

スタッフ・キャスト

監督: ルイス・ティーグ
製作: ダニエル・H・ブラット、ロバート・B・シンガー
原作: スティーヴン・キング
脚本: ドン・カーロス・ダナウェイ、ローレン・キュリアー
撮影: ヤン・デ・ボン
音楽: チャールズ・バーンスタイン
主な出演: ディー・ウォレス（ドナ・トレントン）、ダニー・ピンタウロ（タッド・トレントン）、ダニエル・ヒュー・ケリー（ヴィック・トレントン）他

原作

『クージョ』
著者: スティーブン・キング
翻訳: 永井淳
* 出版: 新潮社 (1983年)

本作の基となった原作小説は、映画公開と同年の1983年に日本語訳版が刊行されている。

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