グラフィックアクセラレータ

グラフィックアクセラレータ：PCグラフィック進化の歴史を彩る装置

パーソナル[コンピュータ]黎明期から、グラフィック処理の高速化を担ってきたのがグラフィックアクセラレータです。当初は、CADなど高度なグラフィック処理を、当時のPCの性能では実現できなかったことから、補助装置として登場しました。線や円、曲線の描画、拡大縮小といった処理を高速化することに重点が置かれていました。ミニコンピュータやワークステーションが標準装備していた機能を、PCでも実現しようという試みが、グラフィックアクセラレータ開発の背景にあります。

ウィンドウアクセラレータ：GUI時代の幕開け

1990年代前半、Microsoft Windows 3.xの普及に伴い、GUI描画の高速化に特化した「ウィンドウアクセラレータ」が登場しました。従来のグラフィックアクセラレータがCAD用途に特化していたのに対し、ウィンドウアクセラレータは、BitBltなどのウィンドウ描画処理の高速化に重点を置いていました。

特に日本で主流だったPC-9800/9821シリーズでは、オンボードのグラフィック機能がWindowsのGUI描画に不十分だったため、ウィンドウアクセラレータは高い需要を誇りました。NECやサードパーティーから様々な製品がリリースされ、市場を賑わせました。S3社のS3-911は、PC/AT互換機|PC_AT互換機においてウィンドウアクセラレータの先駆けとなりました。S3-924では、Windows 3.1のGDI描画を全てハードウェアで処理できるようになり、大きな進歩を遂げました。

Windows 95の登場とDirectXの導入により、グラフィックアクセラレータ市場は再び活況を呈しました。高解像度化、動画再生支援、3D描画機能といった高度な機能が実装されるようになり、競争が激化しました。

技術発展とグラフィックアクセラレータの役割変化

グラフィックアクセラレータの発展は、PCにおけるCPU性能向上と密接に関連しています。1980年代の8ビットパソコン時代はCPU性能が低く、グラフィック処理はハードウェアに依存していました。しかし、16ビットパソコン時代になると、CPU性能の向上により、CPUが直接グラフィック処理を行うのが効率的になり、グラフィックハードウェアはシンプルなものになりました。そのため、高度なグラフィック処理を必要とするユーザー向けのグラフィックアクセラレータの市場が形成されたのです。

PC-9801シリーズのような機種固有の事情も、グラフィックアクセラレータ市場に影響を与えました。PC-9801は、登場時から高機能ではありましたが、仕様がほぼ固定されていたため、サードパーティー製のグラフィックアクセラレータであるGA-1024Aなどが人気を博しました。これは、高解像度でゲームを楽しむための需要の高まりを反映したものです。

32ビット時代になると、CPU性能の向上は著しく、周辺機器との速度差が顕著になってきました。1992年策定のVLバスを境に、CPUと周辺機器の速度差が問題になり始めます。これにより、グラフィック処理はビデオカードのGPUに重点が置かれるようになり、グラフィックアクセラレータはビデオカードにその役割を吸収されていきました。また、Windowsの登場により、MS-DOS時代のようにアプリケーションが直接グラフィックハードウェアを操作できなくなったことも、グラフィックアクセラレータの役割変化の一因と言えるでしょう。

まとめ

グラフィックアクセラレータは、PCグラフィック技術の発展において重要な役割を果たしました。時代に合わせてその機能や役割は変化しましたが、PCの性能向上に貢献したことは間違いありません。その歴史は、PCの進化と密接に繋がっていると言えるでしょう。

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