ゲーデ

ゲーデ（Guede）またはゲデ（Gede）は、ハイチのヴードゥー教における死神であり、ブラーブ・ゲデとも呼ばれています。

概要

ゲーデは、死とセックスを司るロア（神霊）であり、古ぼけて擦り切れ、破れた黒い山高帽と燕尾服を着た男の姿で表されます。彼はギネーと呼ばれる冥府へ向かう途中にある「永遠の交差点」に立っているとされ、生きてきた全ての人間を知っているため非常に賢明である一方、ひどく下品な態度や言葉遣いをし、陽気で葉巻と酒を好むという特徴を持ちます。

ローズマリ・エレン・グィリーによれば、ゲーデの象徴は「棺と男根像」です。

ヴードゥー教のロアはナシオン（あるいはナンチョン）と呼ばれるグループに分けられますが、ゲーデはいかなるナシオンにも属していません。ナシオンは、アフリカから伝播した神々をもとにしたラダ群と、ハイチやジャマイカ、ドミニカ共和国での蜂起した奴隷の首長や古参の奴隷であるコンゴの伝える神々で構成されるペトロ群に大別されます。ゲーデは奴隷として連れてこられ死んだアボメイの王がロアになったとされ、立野淳也によれば彼は「ペトロ群の代表」あるいは「死を司るロア集団の総称」とされています。

ゲーデは、バロン・サメディ（土曜男爵）、バロン・ラ・クロワ（十字架男爵）、バロン・シミティエール（墓地男爵）などの別名を持ちます。一説には、これらの3柱のロアはナシオンの1つである「ペトロ群」に属しており、バロン・ラ・クロワはママン・ブリジットとの間にゲデを産んだとされています。

祝祭

11月1～2日に行われる「Fette Gede」と呼ばれる祝祭では、ティギニンと呼ばれる信徒が墓地へ集まり、頭蓋骨、花綱、キャンドルが添えられた十字架へラム[[酒]]を注ぎます。その儀礼において「馬に乗る」と表現される人間へ憑依したゲーデは、その口を借りて卑猥な冗談を喋り、主に他教の外国人へからかいの言葉を投げかけます。檀原照和によれば、この際、彼（が憑依した人物）へチップを提供するのが礼儀とされています。

バロン・サメディも同じ日を祭日としますが、両者が同じ装束で表される以外に、バロン・サメディは「カラスを踏む聖エクスペディトゥス」の聖画か「十字架上のイエス」で、ゲーデは「聖ジェラール」で表される点に相違があります。

生と死の仲介者

ゲーデは、生と死の間の仲介者とも言われています。ヴードゥー教の全体を展開する中心であるゲーデ崇拝は、死を「生の一部」とし、幽霊や蘇る死体などの信仰を持たないアフリカ信仰体系を色濃く残しています。ヴードゥー教は主に生殖を司り葬礼にはあまり重きを置かないにもかかわらず、ゲーデを「死を司る」と表現する点について、檀原照和は「西欧により歪められた宗教観」であると指摘しています。

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