コシヒカリ

コシヒカリ：日本の食卓を彩る名米

コシヒカリは、日本を代表する稲の品種であり、その名前は「越の国に光輝く」という願いを込めて名付けられました。その優れた食味と粘り気から、長年に渡り日本の食文化を支えてきた、まさに国民的な米と言えるでしょう。

品種特性と歴史

コシヒカリは1956年、農林100号として命名登録されました。粘り強く、優れた食味を持つ一方で、倒伏しやすくいもち病などの病害にも弱いという特性を持っています。しかし、その美味しさから、東北地方以南の各地で広く栽培されるようになりました。1979年以降は作付面積でトップを維持し続け、日本の米生産において圧倒的なシェアを誇ります。

コシヒカリという名称は、越前、越中、越後といった地域を指す「越の国」と「光」を組み合わせたもの。旧新潟県農業試験場長の国武正彦氏が、雪深い越の国で輝く光となるようにという願いを込めて命名しました。

育成の道のり

コシヒカリの誕生は、第二次世界大戦後の食糧増産という大きな目標の下で行われた品種改良の成果です。新潟県農業試験場の高橋浩之氏を筆頭に、多くの研究者たちが長年に渡り努力を重ねました。

1944年、「農林22号」と「農林1号」の交配から始まった育成過程は、戦争による中断や、育成過程での困難を乗り越え、福井県農業試験場での選抜を経て、1956年に農林100号として登録されました。福井県での選抜では、湿田でも生育できる強健な性質が確認されたことも大きなポイントでした。

当初は倒伏しやすいなどの欠点も指摘されましたが、新潟県と千葉県がその優れた米質に着目し、奨励品種として採用したことが、コシヒカリの普及に大きく貢献しました。

全国への普及と食味

コシヒカリは、その優れた食味から全国各地で栽培されています。特に、新潟県魚沼地方のコシヒカリは、その高い品質から「特A」評価を得ており、高値で取引されています。魚沼地方の気候が、コシヒカリの生育に適していることがその理由の一つです。

しかし、コシヒカリは高温や多雨にも弱いという側面も持っており、その栽培には地域特性を考慮した技術が必要です。近年では、アメリカ合衆国カリフォルニア州でも栽培が行われるなど、海外への普及も進んでいます。

コシヒカリBL

近年では、いもち病抵抗性を持つコシヒカリBL（Blast resistance Lines）という品種群も登場しています。新潟県を中心に栽培されているコシヒカリBLは、従来のコシヒカリよりも病害への抵抗性が高く、安定した生産に貢献しています。

関連品種

コシヒカリは、多くの品種の親品種としても重要な役割を果たしています。「あきたこまち」「ひとめぼれ」「ヒノヒカリ」など、現在でも広く栽培されている多くの品種がコシヒカリを祖先品種として持ちます。その遺伝子を受け継いだ品種は、それぞれ地域特性に合わせた独自の風味を特徴としています。

コシヒカリの未来

コシヒカリは、これからも日本の食文化において重要な役割を果たしていくでしょう。しかし、気候変動や病害虫への対策など、課題も残されています。品種改良の努力は、これからも続けられていくでしょう。

脚注

（ここに参考文献などを記述）

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