コッペリア

コッペリアとは

『コッペリア』は、フランスの作曲家レオ・ドリーブによる音楽と、アルテュール・サン＝レオンによる振付で創造された、全3幕からなる有名なバレエ作品です。正式な原題は『コッペリア、あるいは琺瑯質（エナメル）の目をもつ乙女』といい、人間のように見える精巧な人形を巡る物語が描かれます。

この作品は、ドイツの作家E.T.A.ホフマンの幻想的な物語『砂男』に触発されています。しかし、『砂男』が人形に心を奪われた男の狂気を主題とするのに対し、『コッペリア』はそうした陰鬱な要素を排し、陽気で明るいコメディとして再構築されています。台本はサン＝レオン自身とシャルル・ニュイッテルによって書かれました。

1870年5月25日、パリ・オペラ座で初演されました。主演の村娘スワニルダ役は当時16歳だったジュゼッパ・ボツァッキが務め、相手役のフランツは、有名な美人バレリーナ、ウジェニー・フィオクルが男性役として演じ、話題を呼びました。

物語のタイトルは、重要な役割を担う自動人形「コッペリア」に由来しますが、作品の中心で展開されるのは、村の娘スワニルダと青年フランツ、そして彼らの恋にまつわる騒動であり、コッペリアと彼女を創り出したコッペリウス博士は、物語の進行に欠かせないキャラクターでありながらも、主役はあくまでスワニルダとフランツです。

主な登場人物

スワニルダ：村の人気者の娘。フランツの恋人。
フランツ：村の青年。人形とは知らず、窓辺のコッペリアに惹かれる。
コッペリウス博士：風変わりな人形作り職人。自動人形コッペリアを創造した。
コッペリア：コッペリウス博士が作った、まるで生きているような自動人形。
* 友人たち：スワニルダに付き添い、共に冒険や祭りに参加する村の娘たち。

あらすじ

第1幕

物語はポーランドのある農村から始まります。村には、人付き合いを避け、陰気で気難しいと評判の人形作り職人、コッペリウス博士がいました。彼の家の二階の窓辺には、美しい娘コッペリアが座って本を読んでいますが、実は彼女はコッペリウス博士が作り上げた精巧な自動人形です。村人たちはその事実を知りません。

村で一番明るく可愛らしいスワニルダは、村の青年フランツと恋仲です。しかし、最近フランツは窓辺のコッペリアに心を奪われている様子。これに気づいたスワニルダは嫉妬し、二人は口論になってしまいます。

ある日、町へ出かけようとしたコッペリウス博士が、うっかり家の鍵を落としてしまいます。この機会を逃すまいと、好奇心旺盛なスワニルダと彼女の友人たちは、落ちていた鍵を拾って博士の家に忍び込むことを計画します。

第2幕

舞台はコッペリウス博士の薄暗い家の中。室内には様々な種類の人形たちが置かれています。家の中を探索していたスワニルダたちは、窓辺にいたコッペリアが人間ではなく、精巧な人形であったことに気づき驚きます。

その時、家に戻ってきたコッペリウス博士に発見され、友人たちは慌てて逃げ出しますが、スワニルダは博士に見つからぬように身を隠すことに成功します。そこへ、窓辺のコッペリアに会いたい一心で、フランツも梯子を使って忍び込んできますが、すぐにコッペリウス博士に見つかってしまいます。

激怒したコッペリウス博士ですが、一計を案じます。フランツに眠り薬を混ぜたワインを勧め、酔い潰れた彼から生命の力を抜き取り、自慢のコッペリアに吹き込もうと企てます。この様子を物陰で見ていたスワニルダは、とっさにコッペリアになりすまし、博士を翻弄し、いたずらを仕掛けます。

スワニルダの大胆な行動によって騒ぎが大きくなり、フランツも目を覚まします。コッペリアの正体と、スワニルダの機転を知ったフランツは、彼女との仲を修復します。

第3幕

村は祭りの日を迎え、仲直りしたスワニルダとフランツの結婚式が盛大に行われます。人形を壊されて怒り心頭のコッペリウス博士が祝いの場に乗り込んできますが、スワニルダとフランツの謝罪と村長の取りなしにより、最終的に博士も機嫌を直し、二人を祝福します。

祝宴では「時」「曙」「祈り」「仕事」「結婚」「戦い」「平和」といった様々なテーマの踊りが披露され、村人たちが結婚を祝います。最後は登場人物全員が踊る賑やかなギャロップでフィナーレを迎えます。

演出によっては結末が異なり、コッペリアが人間になるハッピーエンドや、一人残されたコッペリウス博士の足元に壊れたコッペリアだけが残されるほろ苦い結末など、様々なバージョンが存在します。

ドリーブの生気に満ちた音楽は、この作品の明るくコミカルな雰囲気を際立たせており、現在でも多くの人々に愛される理由の一つとなっています。

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