コマーズ

コマーズ：競走馬としての平凡な経歴から、名繁殖牝馬への転身

コマーズ (Comaz) は、1983年カナダで生まれた競走馬です。アメリカで2戦1勝という、決して華々しいとは言えない競走馬生活を送った後、繁殖牝馬として日本に輸入されました。しかし、その後の活躍は、競走馬時代の成績をはるかに凌駕するものでした。

コマーズの競走馬時代は短く、1986年末にアメリカでデビューし、初戦を勝利で飾ります。しかし、続くレースでは6着に敗れ、その後引退しました。2戦1勝という成績は、将来大きな成功を収める繁殖牝馬としてのキャリアを予感させるには、あまりにも地味なものでした。

転機は、1990年に訪れます。キーンランド・ノーベンバーセールで、すでにアフリートとの仔を妊娠した状態で上場されたコマーズは、5万5000ドルで落札され、日本へ輸入されました。北海道門別町の田端勝牧場（現タバタファーム）で繁殖生活を開始したコマーズは、そこで驚異的な繁殖能力を発揮します。

1994年、コマーズがアフリートとの間に産んだ最初の仔、ゴールデンジャックが、報知杯4歳牝馬特別を制覇しました。これはコマーズ自身には叶わなかった重賞競走制覇であり、彼女の繁殖牝馬としての才能が開花した瞬間でした。ゴールデンジャックはその後も優駿牝馬で2着、エリザベス女王杯で5着と、GI競走でも活躍を見せました。

ゴールデンジャックの成功を受け、アフリートも日本に輸入され、コマーズとの交配が再び行われました。そして1997年、ゴールデンジャックの全弟にあたるスターリングローズが誕生します。スターリングローズはダート路線で頭角を現し、重賞6勝という輝かしい成績を残しました。さらに2002年には、JBCスプリントを制覇し、コマーズの産駒として初のGI級競走優勝馬となりました。

コマーズは、日本での繁殖生活を通じて11頭の産駒（うち日本産10頭）を送り出しました。2007年には用途変更となり、繁殖生活に幕を閉じましたが、その血統は現在も日本の競馬界で輝きを放っています。2019年には、ゴールデンジャックの孫にあたるミツバが川崎記念を制覇するなど、コマーズの牝系は発展を続け、その偉大な繁殖能力は、現代においても大きな影響を与え続けています。

コマーズの血統背景には、母の半兄に名種牡馬ナイスダンサー、半姉の産駒にパークリージェントなど、錚々たる名馬の名が連なります。これらの血統的背景も、コマーズの優れた繁殖能力に貢献したと考えられます。

コマーズは競走馬としては目立たない存在でしたが、繁殖牝馬としては日本競馬史に大きな足跡を残した、まさに名繁殖牝馬と言えるでしょう。彼女の産駒、そしてその子孫たちが活躍する姿は、コマーズの偉大さを改めて証明しています。

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