コロタイプ

コロタイプとは

コロタイプ（collotype）は、平版印刷の一種であり、写真製版技術として実用化された最も古いものの一つです。かつては絵葉書や美術品の複製に広く用いられていましたが、現在では特殊な目的以外ではほとんど使われていません。

コロタイプの技法

コロタイプは、独特の製版方法を用いています。その工程は以下の通りです。

1. ガラス板にゼラチンと感光液を塗布し、加熱します。
2. 版面に微細な皺（レチキュレーション）を形成します。
3. 写真ネガを密着させ、露光します。露光された部分のゼラチンが硬化し、水を弾く性質を持ちます。
4. 版面を湿らせると、水を受け入れる部分が膨張し、インクが付着しなくなります。
5. 硬化した部分にのみインクが付着し、インクの付着量の大小によって連続階調が表現されます。

コロタイプ印刷の特徴は、オフセット印刷のような網点を持たない、滑らかな階調表現ができることです。

コロタイプの課題

しかし、コロタイプにはいくつかの欠点があります。

印刷速度が遅い
版の耐久性が低い
複版が困難
多色刷りが難しい

これらの理由から、コロタイプは現在ではほとんど用いられなくなりました。

コロタイプの歴史

コロタイプは19世紀のフランスで生まれ、1876年にドイツのヨーゼフ・アルバートによって実用化されました。

日本におけるコロタイプ

日本では、小川一真が1883年にボストンでコロタイプ技術を習得し、帰国後の1889年に新橋で最初のコロタイプ工場を開設しました。日露戦争時には、コロタイプと石版を組み合わせた絵葉書が大流行しました。1897年には、上田義三が横浜でコロタイプ印刷業「横浜写真版印刷所（のち上田写真版合資会社）」を開業しました。

便利堂（1887年創業、1905年からコロタイプ印刷を開始）の佐藤濱次郎は、1935年に法隆寺金堂壁画の原寸撮影を行い、それをもとに1938年にコロタイプによる複製を作成しました。1949年に壁画は焼損しましたが、後にこのコロタイプ複製をもとにして再現されました。

現在のコロタイプ

効率の悪さから、コロタイプはほとんど見られない技術となりましたが、文化財の複製においてはその重要性が再認識されています。社名に「コロタイプ」と付く印刷会社でも、実際にはオフセット印刷のみを行っている場合がほとんどです。しかし、便利堂は現在でもカラーコロタイプ印刷を手がけており、2003年には「コロタイプの保存と印刷文化を考える会」が発足するなど、技術の保存と普及に向けた活動が行われています。

コロタイプは、その独特な表現力と歴史的価値から、印刷技術の遺産として大切にされています。

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