ザ・カクテルバー

サントリー「ザ・カクテルバー」：低アルコール飲料市場のパイオニアとその栄枯盛衰

サントリーの「ザ・カクテルバー」は、1990年代の低アルコール飲料市場において、その名を轟かせた製品です。手軽に楽しめるカクテルとして一世を風靡しましたが、市場環境の変化や競合製品の出現により、短命に終わった製品も多く存在する中、その歴史は長く、そして波乱に満ちたものでした。

誕生と成功：時代のニーズと革新的なパッケージ

1980年代、サントリーは150mlボトル入りのトロピカルカクテルなどを販売していましたが、ソーダで割る必要があり、保存性やパッケージデザインに課題がありました。そこで、新たなアルコール飲料として、1993年3月、200mlボトル入りで、ソーダ割り不要の「ザ・カクテルバー」が発売されました。

発売当初はジントニック、シンガポールスリング、モスコーミュールの3種類。永瀬正敏を起用したCMと「愛だろ、愛っ。」というキャッチコピーが話題を呼び、発売数ヶ月で目標販売数を達成しました。その後も、ソルティードッグ、スクリュードライバー、カシスソーダなど、人気のカクテルが次々と追加され、売上を伸ばしていきました。1994年には業務用市場向けに1.8Lペットボトルの「ザ・カクテルバー〈コンクタイプV〉」も発売されました。

1990年代半ばには、種類が19種類にまで増加しましたが、多様化による販売停滞も生じました。1996年と1997年にはリニューアルを行い、ラインナップを整理。1997年にはキャッチコピーを「うまいぜベイビー。」に変更し、季節限定商品などを投入して再活性化を図りました。

低価格化競争と苦戦：市場環境の変化と販売終了

しかし、1990年代後半以降、発泡[[酒]]や缶チューハイなどのアルコール飲料の低価格化が進み、「ザ・カクテルバー」は価格競争で苦戦を強いられることになります。

1999年以降、新しいカクテルの投入や広告展開の刷新、さらには複数回のリニューアルを実施しましたが、売り上げは回復せず、2000年代初頭には全盛期の3分の1程度にまで落ち込みました。同時期に発売された協和発酵の「カクテルパートナー」（後にアサヒ[[ビール]]に移管）など、競合製品にも押され、2002年以降は製品ラインナップの大幅な縮小を余儀なくされます。

2004年には、280mlや350ml缶入りの製品を主力に据え、大幅な刷新を図りましたが、売上回復には至らず、2005年末には缶入り製品の販売を終了。2006年には瓶入り製品の大半、2007年には最後の2種類も製造中止となり、長きにわたる「ザ・カクテルバー」の歴史に一旦幕を閉じました。

復活と再終焉：限定復刻とプロフェッショナルシリーズ

2010年代には、数量限定で240ml瓶商品の復刻版が発売され、2018年には「ザ・カクテルバー プロフェッショナル」としてジントニックとモスコーミュールの2種類が市場に再登場しました。V6の森田剛をイメージキャラクターに起用するなど、意欲的な取り組みが行われましたが、期待通りの成果には至らず、翌2019年には生産終了となりました。

まとめ：時代の流れと革新の跡

「ザ・カクテルバー」は、時代のニーズを的確にとらえ、革新的なパッケージとマーケティングで成功を収めた製品でした。しかし、市場環境の変化や競合製品の出現など、様々な要因が重なり、その歴史は栄枯盛衰を繰り返しました。低アルコール飲料市場におけるパイオニアとしての「ザ・カクテルバー」は、市場のダイナミズムを示す好例と言えるでしょう。その栄光と挫折の歴史は、今後のRTD市場を考える上でも貴重な教訓となります。

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