シンフォニア

シンフォニア（Sinfonia）

シンフォニアは、イタリア語を語源とする言葉で、元々は漠然と合奏曲を意味していました。ギリシア語の「syn-（一緒に）」と「phone（音）」が組み合わさった言葉が語源です。「交響曲」（シンフォニー）と同語源であり、バロック音楽の分野においては、主に「声楽作品中に挿入された合奏曲」を指す用語として用いられます。

バロック音楽におけるシンフォニア

バロック期にイタリアで始まったオペラ（バロック・オペラ）では、歌唱を伴わない器楽合奏による楽章がシンフォニアと呼ばれていました。代表的なのは序曲（前奏）としての使用ですが、場面の切り替わりに演奏される間奏も含まれます。これらのシンフォニアは次第に規模が大きくなり、独立して演奏されるようになり、古典派音楽の交響曲へと発展していきました。

バロック音楽においては、“Ouverture”（序曲）といえば、バレエやフランス・オペラなどで用いられるフランス風序曲の形式を指します。一方、「シンフォニア」は主にイタリア・オペラとその流れを汲む声楽作品において用いられるという区別がありました。

イタリア・オペラの形式を取り入れたオラトリオやカンタータでも、同様の形式でシンフォニアが用いられるようになりました。当時オペラが普及しなかったドイツでは、カンタータの中にシンフォニアが多く作曲されました。ヨハン・ゼバスティアン・バッハの教会カンタータには、数多くの優れたシンフォニアの作例があります。声楽の楽章に組み込まれ、2楽章以上のシンフォニアが挿入されているものもあります。これらのシンフォニアには、世俗音楽として作曲された曲を転用したり、その逆の転用を行った例も確認できます。

例えば、ケーテン時代に作曲されたと考えられるオーボエ協奏曲BWV1053aは、楽章が分割され、教会カンタータBWV49とBWV169のシンフォニアに編曲・転用されました。その後、チェンバロ協奏曲BWV1053として再び編曲されたと考えられています。

その他の用法

バッハの「インヴェンションとシンフォニア」や「パルティータ」中の楽章など、鍵盤楽器の独奏曲にもシンフォニアという言葉が用いられています。この場合は、「多声部を含むポリフォニー」という意味合いで使用されています。語源が同じであり、同じバロック音楽における用語であっても、意味合いや楽曲形態としては全く異なるものであることに注意が必要です。

関連項目

序曲
前奏曲
イタリア式序曲
交響曲

もう一度検索