スピーダー

スピーダー：瀬戸内海の高速航路を駆け抜けた船

1995年から1998年にかけて、大分県と愛媛県を高速で結んでいた「スピーダー」は、ダイヤモンドフェリーが運航していたウォータージェット推進型の高速船です。オーストラリアのオースタル社が建造したこの船は、瀬戸内海の航路に新たな活気をもたらす存在として期待されましたが、わずか3年でその航路を終えています。その歴史と背景を詳細に見ていきましょう。

就航と期待

スピーダーは1995年7月7日に就航しました。大分港（西大分港）、別府港（別府国際観光港）、伊予港の3港を結び、大分と伊予間約120kmの航路を約1時間45分で航行しました。当時、エコノミーシート4,800円、ファーストシート6,800円という料金設定で、快適な高速航路への期待は高まりました。年間15万人の利用客を見込んでいたものの、実際にはこの期待値を下回る結果に終わりました。

運航と利用客数の低迷

就航当初は1日3往復の運航でしたが、1997年12月以降は2往復に減便されました。1997年7月18日からは別府港への寄港も開始されました。しかし、台風や冬の荒天による欠航が頻繁に発生し、安定した運航を維持することが困難でした。その結果、1996年度の利用客数は11万人、1997年度には10万人程度と低迷し、事業の継続は困難となりました。

船体の設計と特徴

スピーダーの船体は2層構造で、上層には操舵室とファーストシート（33名）、下層にはエコノミーシート（298名）が配置されていました。2クラス制を採用することで、幅広い利用者のニーズに対応しようとしていました。また、船体にはライド・コントロール・システムが搭載され、水線下のフィンとフラップを電子制御することで船体の揺れを抑制し、快適な航行を実現する工夫が凝らされていました。このシステムは、荒天時の航行安定性向上に大きく貢献するものと期待されていましたが、欠航の多発を完全に防ぐまでには至りませんでした。

航路休止とその後

残念ながら、スピーダーは利用客数の伸び悩みと、天候に左右される運航の不安定さを克服することができず、1998年3月26日に航路は休止されました。わずか3年の短い航海の歴史でしたが、瀬戸内海の高速船の歴史において重要な1ページを刻んだと言えるでしょう。スピーダーの航路休止は、高速船の運航における様々な課題を示唆する事例として、現在でも参考にされていると考えられます。 その後の動向は不明ですが、この船がどのような運命を辿ったのか、興味深いところです。

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