スリン

スリンは、東南アジアの国々、特にインドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピンなどで親しまれている竹製の管楽器です。インドネシア語では「seruling」とも呼ばれますが、「suling」はその短縮形として用いられます。

スリンには縦笛と横笛の2種類があり、それぞれ異なる音楽的役割を担っています。縦笛のスリンは、インドネシアのガムラン音楽において重要な楽器であり、特にスンダ地方（西ジャワ）、中部ジャワ、バリ島などで多用されています。スンダ音楽では、カチャピ（撥弦楽器）との合奏で主旋律を奏でる役割を担い、ガムラン・ドゥグンと呼ばれるアンサンブルでは、主旋律をスリンが担当します。バリのガムランでは、鍵盤楽器の速いメロディーに追従し、循環呼吸という特殊な呼吸法を用いることで、途切れることのない演奏を実現しています。ジャワのガムランにおいては、曲の骨格を刻むサロンやスルントゥムといった楽器とは対照的に、自由なリズムで演奏されます。

一方、インドネシアの大衆音楽であるダンドゥットでは、横笛のスリンが主に用いられています。ダンドゥット音楽において、スリンの持つ哀愁を帯びた音色は欠かせない要素となっています。伝統的にスリンは竹製ですが、現代ではプラスチックやアルミ合金などの素材を用いたスリンも存在します。

スリンの指使いは地域や音楽ジャンルによって異なりますが、スンダ・ガムランで用いられる縦笛のスリンの指使いは、特定の運指パターンに従います。これらの指使いを習得することで、スリン特有の音色や旋律を奏でることができます。

スリンは、その多様な音色と表現力で、東南アジアの音楽文化において重要な役割を担っています。伝統的なガムラン音楽から現代の大衆音楽まで、幅広いジャンルでその美しい音色を聴くことができるでしょう。

参考文献
Keat Gin Ooi Southeast Asia: A Historical Encyclopedia, from Angkor Wat to East Timor. ABC-CLIO. ISBN 978-1-57607-770-2.
Tamara Thiessen (2012). Borneo: Sabah - Brunei - Sarawak. Bradt Travel Guides. ISBN 978-1-84162-390-0.

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