タスマニアデビル

タスマニアデビル

タスマニアデビル（学名: Sarcophilus harrisii）は、フクロネコ形目フクロネコ科に属する有袋類です。その獰猛なイメージから「デビル」と名付けられましたが、愛嬌のある外見とユニークな生態を持つ動物です。

分布と形態

タスマニアデビルは、かつてオーストラリア大陸にも生息していましたが、現在はタスマニア島のみに生息しています。体長は50-60cm、体重はオスで10-12kg、メスで6-8kg程度。黒または黒褐色の体毛に覆われ、胸や腰に白い模様があるのが特徴です。耳の被毛は薄く、興奮するとピンクや赤色が鮮明になります。上顎の2本の牙は一生伸び続け、尻尾には脂肪を蓄えることができます。

生態

タスマニアデビルは夜行性で、昼間は巣穴や藪の中で休み、夜になると餌を求めて活動します。肉食性で、主に動物の死骸を食べますが、小型哺乳類、鳥類、昆虫なども捕食します。顎の力が非常に強く、骨ごと噛み砕いて食べることができます。気性は荒く、餌の奪い合いで激しい争いを繰り広げますが、一方で臆病な一面も持ち合わせています。独特の鳴き声を発し、その声は数キロ先まで響き渡ると言われています。

デビル顔面腫瘍性疾患（DFTD）

近年、タスマニアデビルの個体数を激減させているのが、デビル顔面腫瘍性疾患（DFTD）と呼ばれる伝染性の癌です。これは、タスマニアデビルの顔面や頚部に発生する悪性腫瘍で、咬傷を通じて癌細胞が他の個体に伝染します。腫瘍が肥大化すると、餌を摂取できなくなり、餓死に至ります。DFTDは急速に感染地域を拡大しており、タスマニアデビルの絶滅を危惧する声が高まっています。

人間との関係と保護活動

かつてタスマニアデビルは、家畜を襲う害獣として駆除の対象とされていましたが、1941年に保護法が成立し、保護されるようになりました。しかし、DFTDの蔓延により、再び絶滅の危機に瀕しています。現在、タスマニア州政府や研究機関などが協力し、DFTDの研究や治療法の開発、健康な個体の隔離、人工繁殖などの保護活動が行われています。

マリア島への移住計画とその影響

2012年には、DFTDから保護する目的でタスマニアデビルがマリア島に移されました。しかし、この移住が島の生態系に悪影響を及ぼしているという報告があります。ペンギンのつがいが激減したり、ミズナギドリのコロニーが消滅したりするなど、生態系のバランスが崩れている可能性が指摘されています。

まとめ

タスマニアデビルは、タスマニア島の生態系において重要な役割を果たしている動物です。しかし、DFTDの脅威にさらされ、絶滅の危機に瀕しています。保護活動の推進とともに、生態系への影響も考慮した慎重な対策が求められています。

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