デンジソウ

デンジソウ（田字草）について

デンジソウ（学名：Marsilea quadrifolia L.）は、特徴的な形態を持つ水草で、一般的にはシダ植物と分類されます。見た目は四つ葉のクローバーに似ており、夏緑性の多年草として知られています。この植物は浅い水域や湿地に生息し、しばしば大きな群落を形成することで目立ちます。

分類と系統

デンジソウはデンジソウ属に属し、特異な形態のシダ植物として、その植物界の中で独自の位置を占めています。この属は、形態が似ているPilulariaやRegnellidiumと共にデンジソウ科を形成していますが、分子遺伝学的解析においては、これらが近縁である可能性があるとの結果も示されています。このため、今後の研究によって、様々なシダ類との関係性が明らかにされることが期待されています。

特徴

デンジソウは、水中や湿地の泥の上に広がり、長い茎が横に這い進むことで、大きな群落を形成します。葉は長い葉柄を持ち、先端には四枚の小葉がついています。この小葉は扇型で、中心で一つの角に繋がり、全体で円形を形成します。水中では葉が泳いでおり、浮いている場合は艶があり、空気中に出た場合は艶が少なく見えます。また、葉脈の構造は他のクローバー類と異なり、シダ特有の分枝を持っています。

胞子のうは、葉の基部近くから出ており、楕円形で膜で覆われた胞子のう群に含まれています。これには大胞子と小胞子があり、それぞれが異なる配偶体を形成することが特徴です。大胞子は雌配偶体へ、小胞子は雄配偶体へと発展します。

生育環境と分布

かつては水田の雑草として広く知られていましたが、近年では、その数が急激に減少し、場合によっては絶滅危惧種として扱われることもあります。「田字草」という名前は、葉が田の字の形を想起させることに由来しています。本州南部から九州、さらには奄美にかけての地域に分布し、北海道ではごく稀に見られます。国外では、ヨーロッパやインド北部、東アジアにまでその生息地が広がっています。

利用と価値

デンジソウは、かつて水田で駆除されることが多い雑草とみなされていましたが、現在では観賞目的で栽培されることが一般的です。特にビオトープや飼育環境での水草として人気があります。観賞用の名前としては「ウォータークローバー」とも呼ばれ、希少種として愛されています。

近縁種

デンジソウ属には熱帯地域に約65種が存在し、日本国内でもナンゴクデンジソウ（M. crenata Presl）という絶滅危惧種が知られています。この種は常緑性で、葉の形態や胞子の位置に差異があります。主に九州南端から琉球列島を中心に分布しています。日本の福岡県ではデンジソウとナンゴクデンジソウが共存して見られます。

近年、環境省のレッドデータブックにおいてナンゴクデンジソウのランクが更新されましたが、依然としてその生息数は減少傾向にあります。

まとめ

デンジソウは、その独特な形態と生息環境から、注目を集める植物です。生態系における重要性や観賞用としての価値から、今後の保護活動や研究が待たれます。デンジソウの希少な姿をぜひ今後も観察していきたいものです。

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