ドウティ

ドウティ：インドの伝統的な腰布

ドウティ（dhoti、ヒンディー語: धोती）は、インドのヒンドゥー教徒男性が着用する伝統的な腰布の一種です。一枚の布を腰に巻き付けるだけのシンプルなものから、カッチャ式と呼ばれる股の間に布を通して動きやすくする着方まで、様々なスタイルがあります。

概要

ドウティは、着用するとだいたいへその上から踝までの丈になります。一般的には、縦に約120センチ、横に約420センチほどの、縫い目のない長方形の白い木綿の布が用いられます。ヒンドゥー教では、縫い目や断ち落としのない布が清浄とされており、布を継ぎ足して使うことはありません。これは、ヒンドゥー教の行者が修行衣として用いるランゴーティ（langoti）と呼ばれる一枚布の褌にも共通する考え方です。ランゴーティの場合、股下に布を通すことは禁欲を表現する意味合いもあります。

ヒンドゥー教では、裸体は神聖なものとされ、かつては裸体を晒すことは恥とは考えられていませんでした。上衣を着用するようになったのは、17世紀以降のイスラム教の影響によるものです。現在では、クルタ（kurta）という丸首のシャツや西洋風のシャツと組み合わせて着用されることが一般的です。

着装方法

ドウティの着装方法は、一見複雑に見えますが、実際にはいくつかのステップに分けることができます。ここでは、股下に布を通すカッチャ式の着方を紹介します。

1. まず、布の左端から約4分の1程度の部分を腰に当てます（左が短く、右が長くなるように）。
2. 腰幅にあたる左右の織り耳を摘んで、腰の前で結びます。
3. 左側の結び余りの布部分を脚の間に通し、背中側で折り畳んで後ろ腰に挟みます。
4. 右側の結び余りの布部分は、左端に余りを取ってから五段に折り畳み、畳んだ部分を結び目を隠すようにしてへその下あたりに挟みます。
5. 最後に、襞を取った余りの布を左腰を通って腰を一周させ、締めて完成です。

この着装方法によって、ドウティは動きやすく、日常生活に適した衣服となります。

文化的な背景

ドウティは、ヒンドゥー教の文化と深く結びついています。そのシンプルな形状や縫い目のない布という特徴は、宗教的な清浄観に基づいています。また、かつての裸体観や、イスラム文化の影響を受けた上衣との組み合わせなど、歴史的な背景も理解することで、ドウティの文化的意義をより深く理解することができます。

まとめ

ドウティは、インドのヒンドゥー教徒男性にとって、単なる衣服以上の意味を持つ伝統的な腰布です。その着装方法や歴史的、文化的背景を知ることで、インド文化への理解を深めることができるでしょう。

参考文献

田中千代『世界の民族衣装 装い方の知恵をさぐる』平凡社

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