トランシット

トランシットとは

トランシット（transit）は、測量において角度を測定するための器械であり、望遠鏡の中心を基準として視準した点との相対的な角度を計測します。この器械は欧州で発明されたセオドライトがアメリカに導入されたことから、特にアメリカではこの名称で呼ばれるようになりました。

日本では、光学的測量器械の使用が始まった当初、セオドライトとトランシットはいずれも「経緯儀」として総称されていましたが、次第に区別されるようになります。国内でセオドライトやトランシットが製造されるにつれ、角度の読み取り方式によって名称が使い分けられることになりました。バーニヤ目盛で角度を読み取るものはトランシット、内蔵精密分度盤の数字をマイクロメーターで読み取るものや、デジタル表示のセオドライトは、セオドライトとして区別されます。

トランシットの構造と使用

トランシットは、専用の三脚の上に設置して使用します。構造としては、望遠鏡が鉛直軸に対して垂直、水平軸に対して水平に動く2軸による回転機構を持ち、これにより望遠鏡で捕らえた2つの点の間の角度を計測します。

角度の読み取りは、一般的にノギスなどでも使われるバーニヤ式を用いて、測角の精度は通常数分の精度を持っています。日本国内では「トランシット」という呼び名が幅広く知られていますが、セオドライトやトータルステーションを含む光学的測角器具全般を指してトランシットと呼ぶこともあります。

時代の変化とトランシット

1990年代に入ると、特に高精度が求められない森林管理や農業の簡易測量、また教育現場で使用される以外のトランシットの製造はほとんど行われなくなります。この頃からは、デジタル数値表示を用いた電子セオドライトや、高精度な操作を可能にするトータルステーションが主流となります。

トータルステーションでは、光波測距儀やデータ処理機能などが組み込まれ、測量の精度や効率が向上しています。これにより、現代の測量業務では、トランシットの使用は次第に減少している傾向にあります。

トランシットとセオドライト

「トランシット」という言葉は、次第に「セオドライト」に取って代わられつつあります。ISO 17123-3でもこの器具の名称は『Theodolites』とされており、国土交通省の公共測量に関連する作業規程においても『セオドライト』という語が使用されています。このように、徐々に名称が統一されつつあることは、測量機器にとっての標準化を促進する動きの一環とも言えます。

まとめ

トランシットは、測量技術の進化とともに重要な役割を果たしてきた器械ですが、現代においてはより高度な技術に取って代わられつつあります。トランシットの理解は、測量に関する知識を深める上で欠かせない要素の一つといえるでしょう。

関連項目

• - 測定
• - 測量
• - トータルステーション
• - セオドライト
• - 光波測距儀

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