ドリア

ドリア：日本が世界に誇る洋食の逸品

ドリアは、ピラフやバターライスの上にベシャメルソース（クリームソース）をかけ、オーブンで焼き上げることで、とろけるチーズとご飯の絶妙なハーモニーが楽しめる洋食です。今や日本全国のレストランや家庭で親しまれる定番料理ですが、その誕生は意外にも横浜ホテルニューグランドに遡ります。

横浜ホテルニューグランドとドリアの出会い

1930年頃、初代総料理長であったサリー・ワイル氏が、体調を崩した欧州の銀行家のために、即興で考案したのがドリアの原型と言われています。バターライスに、エビのクリーム煮とベシャメルソースをかけ、オーブンで焼き上げたこの料理は、たちまち評判となり、メニューに「Shrimp Doria」として正式に採用されました。

その後、ニューグランドの名物料理として長く愛され続け、ワイル氏の弟子たちによって全国へと広まりました。戦前には、エビだけでなくカニを使ったドリアなど、様々なバリエーションが存在したようです。現在もニューグランドでは、ワイル氏のレシピを忠実に再現したドリアを提供しています。

チーズのトッピングと、その歴史

ドリアにチーズを乗せるようになったのは、ワイル氏以降の改良によるものという説があります。しかし、当時フランス料理では、リゾットの上に魚介のクリームソースとチーズをかけてオーブンで焼き上げる料理が存在したという事実も興味深い点です。

ドリアのバリエーション

ドリアは、その具材やソースによって様々な呼び名を持ちます。エビやイカを使ったものはシーフードドリア、鶏肉を使ったものはチキンドリア、カレーを使ったものはカレードリアなど、そのバリエーションは無限大です。ライスグラタンと呼ばれることもあります。イタリアンファミリーレストランチェーンのサイゼリヤが提供する「ミラノ風ドリア」は、ターメリックライスを使用し、クリームソースとミートソースで仕上げた独自の一品です。

ドリアの名前の由来

ドリアという名前は、ジェノヴァの名門貴族であるドーリア家に由来すると言われています。特に、16世紀に活躍した海軍提督アンドレア・ドーリアにちなみ、日本で名付けられた和製外来語です。そのため、ニューグランドでワイル氏の補佐をしていた荒田勇作氏が1964年に出版した『荒田西洋料理』では、「海将風」と記載されています。これは、フランス海軍提督トゥールヴィル伯に由来するフランス料理「Homard Tourville（オマール海老のトゥールヴィル風）」にも通じる命名と言えるでしょう。

ドリアのルーツを探る：フランス料理との繋がり

ドリアの原型は、フランス料理にも見ることができます。エスコフィエの『Le Guide Culinaire』やソルニエの『Le repertoire de la cuisine』には、「Homard Tourville」という料理が記載されています。これは、リゾットの上にオマール海老、牡蠣、ムール貝、トリュフなどをクリームソースで和えたものを乗せ、モルネーソースとチーズをかけてオーブンで焼く料理です。この料理も、ドリアと同様に「海将風」と呼ばれ、ドリアの創作に影響を与えた可能性があります。

まとめ

ドリアは、横浜ホテルニューグランドで誕生し、日本全国に広まった、歴史と奥深さを持つ洋食です。その名前の由来や、フランス料理との繋がりを知ることで、ドリアへの理解はさらに深まるでしょう。シンプルな料理でありながらも、その背景には、料理人たちの創意工夫と歴史が刻まれています。これからも、多くの人々に愛され続ける、日本の定番料理として、その存在感を放ち続けることでしょう。

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