トリアノン条約

トリアノン条約 (Treaty of Trianon)

トリアノン条約は、1920年6月4日にフランスのトリアノン宮殿で調印された、第一次世界大戦の敗戦国であるハンガリー王国と連合国間の講和条約です。これは第一次世界大戦の終結を受けて、戦後の国家秩序を確立するための重要な文書となりました。

背景

第一次世界大戦の前、ハンガリー王国はオーストリア＝ハンガリー二重帝国の一部でしたが、帝国は戦争に敗れ、国内の混乱により解体されました。皇帝カール1世の退位と内乱の影響も重なり、ハンガリーは独立を余儀なくされ、オーストリアとは別々に講和を行う必要が生じました。さらに、ルーマニアやチェコスロバキアがハンガリー領に進駐している状況もあり、国境を明確にするために早急な対策が求められました。

条約の内容

この条約により、ハンガリーは歴史的に領有していた多くの地域を失うこととなります。スロバキア、クロアチア、トランシルヴァニアなどの地域が連合国側に与えられ、それぞれはチェコスロバキア共和国、ユーゴスラビア王国、ルーマニア王国の支配下に置かれました。また、敗戦国であるオーストリアにも国境の一部を割譲し、西部国境地域はオーストリア共和国に与えられました。

加えて、ハンガリーは連合国に対して石炭や家畜の無償提供、賠償金の支払いを強いられるなど、非常に厳しい条件を受け入れることになりました。

割譲された地域

1. 北部ハンガリー (スロバキア、カルパティア・ルテニア) → チェコスロバキア共和国
2. トランシルヴァニア、バナトの大部分 → ルーマニア王国
3. ヴォイヴォディナ、クロアチア、ボスニア → ユーゴスラビア王国
4. 西部国境地域 (ブルゲンラント州) → オーストリア共和国
5. 旧ハンガリー王国領外 (ガリツィア → ポーランド、イストリア半島、南チロル → イタリア)

その後の影響

トリアノン条約の内容は、ハンガリーにとって非常に過酷であり、その後のハンガリー王国の政治状況に大きな影響を与えました。条約に調印した当時のハンガリーは、政治的な不安定や戦乱のため、拒否することができず、結局厳しい条約を受け入れることになりました。その結果、ハンガリーは徐々に右傾化し、第二次世界大戦では枢軸国側に立つことにつながりました。

また、周辺国はハンガリーの再興を恐れ、フランスと小協商を結成して対抗しようとしましたが、ドイツという大国には対抗しきれませんでした。

1939年には、ミュンヘン協定やドイツの協力を得て一部の領土がハンガリーに戻されましたが、戦後は再びその領土を失うことになりました。

2010年6月4日、ハンガリーはこの日を「国民連帯の日」と定め、トリアノン条約が持つ意味を再認識しています。

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