トリノスケール

トリノスケールとは

トリノスケールは、地球近傍天体（NEO）、特に小惑星や彗星が地球に衝突する可能性とその影響度を評価するための指標です。このスケールは、0から10までの11段階のレベルで構成されており、それぞれのレベルは色分けによって視覚的に表現されます。

目的

トリノスケールの主な目的は、地球への天体衝突の危険性について、専門家だけでなく一般の人々にも理解しやすい形で情報を提供することです。これにより、天体衝突の潜在的な脅威に対する意識を高め、適切な対応を促すことが期待されます。

評価の仕組み

トリノスケールは、天体の衝突確率と、衝突した場合に予想される影響の大きさを組み合わせて評価を行います。ただし、天体が衝突するまでの期間は考慮されていません。このため、たとえ高いレベルに分類された天体であっても、衝突が起こるのが数百年先、数千年先という可能性もあります。

スケールの詳細

- レベル0（白）： 衝突の可能性がないか、非常に低い。監視対象外。
- レベル1（白）： 通常の状態。天体衝突の可能性は非常に低いが、観測が必要な天体。
- レベル2（緑）： 注意を要する天体。衝突の可能性は低いが、観測を続ける必要がある。
- レベル3（黄）： 小さな衝突の可能性。地域レベルでの被害が予想される場合がある。
- レベル4（黄）： 比較的小さな衝突の可能性。地域レベル以上の被害が予想される場合がある。
- レベル5（オレンジ）： 地球全体への影響。大きな被害が予想される衝突の可能性がある。
- レベル6（オレンジ）： 地球全体への大きな影響。非常に大きな被害が予想される衝突の可能性がある。
- レベル7（赤）： 地域全体を破壊する規模の天体衝突の可能性がある。
- レベル8（赤）： 大陸規模の被害を引き起こす可能性がある天体衝突の可能性がある。
- レベル9（赤）： 全地球規模で気候変動など壊滅的な被害を引き起こす天体衝突の可能性がある。
- レベル10（赤）： 文明を崩壊させる可能性のある、前例のない規模の天体衝突の可能性がある。

トリノスケールの歴史

トリノスケールは、マサチューセッツ工科大学のリチャード・ビンゼル教授によって提案されました。1999年6月にイタリアのトリノで開催された国際天文学連合の会議で正式に採択されました。ビンゼル教授は、1990年代初頭から小惑星の衝突に対する警戒システムの必要性を感じており、その考えがトリノスケールへと繋がったと述べています。

2005年には、各レベルの説明文がより適切になるように改訂されました。特にレベル1の評価が「注意深く観測するに値する事象」から「普通」に変更されたことは、過剰な報道を抑制する上で重要な改訂でした。

実際の適用例

トリノスケールが実際に適用された最高レベルは、(99942)アポフィスが2029年に地球に接近する際に一時的に適用されたレベル4です。しかし、その後の観測によってアポフィスの軌道がより正確に把握され、衝突の可能性が大幅に低下したため、最終的にはレベル0に格下げされました。また、2024年末には、2024 YR4|2024_YR4 がレベル3に分類された事例があります。

トリノスケールの限界

トリノスケールは、天体の衝突確率と影響度を評価する上で有用なツールですが、衝突までの期間については考慮されていません。したがって、高いレベルに分類された天体でも、すぐに衝突するわけではないという点を理解する必要があります。また、このスケールは、新たな観測データによって評価が変動する可能性があることも留意する必要があります。

トリノスケール

トリノスケールとは

関連事項