トルクレンチ

トルクレンチとは

トルクレンチは、ねじを締め付ける際に、あらかじめ設定したトルク（回転力）で締め付けるための工具です。また、締め付けられたねじのトルクを測定する目的でも使用されます。ねじを使用する様々な現場で、組み立てやメンテナンス作業に広く用いられています。

ねじ部品には、設計段階で軸力（ねじを締め付ける力）が設定されています。しかし、軸力を正確に測定するには高価な測定器や設備が必要となるため、代わりにトルクによる締め付け管理が一般的に行われています。トルクレンチを使用することで、締め付け不足による緩みや、締め過ぎによる破損を防ぎ、作業者による品質のばらつきを低減できます。

一般的に、ボルト径M30以下のねじには手動式のトルクレンチが用いられますが、M30を超える大径ボルトには、油圧、空気圧、電動などの動力を用いた動力トルクレンチが使われます。

日本では、計量法により、SI単位以外のトルクレンチの販売は原則として禁止されています。

トルクレンチの種類

手動トルクレンチは、その形状や構造、トルクを示す方式によって、主に以下の種類に分けられます。

シグナル式トルクレンチ

あらかじめ設定したトルクに達すると、「カチン」という音や感触で知らせてくれるトルクレンチです。一般的には右ねじ（時計回り）専用のものが多いですが、左右両方に対応できるものもあります。

プリセット形: 本体に目盛りが付いており、グリップエンドを回すことで設定トルクを調整できます。ただし、保管時にはバネの劣化を防ぐため、設定トルクを最低値に戻す必要があります。
単能形: 本体に目盛りがなく、設定トルクを変更するには専用の工具が必要です。プリセット形よりも堅牢で安価であり、設定トルクの変更を制限できるため、工場などの生産ラインでよく使用されます。メーカーや販売店でトルクを設定して出荷されることが多いです。

直読式トルクレンチ

負荷されているトルクを、目盛りで直接読み取ることができるトルクレンチです。作業場所によっては目盛りが読みにくい場合がありますが、ピークホールド機能や置針機能が付いたものは、作業後に最大トルク値を確認できます。左右どちらのねじの測定にも対応できるものがほとんどです。

プレート形: 梁（ビーム）のたわみを利用してトルクを測定します。構造が単純で安価、比較的精度が高いのが特徴です。
ダイヤル形: 円柱のねじれ角を利用してトルクを測定します。本体のダイヤル目盛りで読み取ります。
デジタル形: センサーでトルクを測定し、デジタル表示します。ピークホールド機能が付いているものが多く、測定値を記録したり、パソコンに転送したりできるものもあります。角度センサーを搭載し、角度締めに対応したモデルもあります。プレート形やダイヤル形に比べて高価です。

その他の種類

上記以外にも、シグナル式と直読式の機能を併せ持ち、トルク値を表示する複合型のトルクレンチも存在します。

トルクレンチの用途

トルクレンチの用途は、主に以下の2つに大別されます。

作業用途: ねじを所定のトルクで締め付ける作業に使用します。通常はシグナル式のトルクレンチが用いられますが、工場などでは、より正確なトルク管理のために直読式トルクレンチが使用されることもあります。特に、締め付けトルクが大きすぎると不具合が発生する可能性がある箇所（例えば、ガラスライニング配管やフレア加工された配管など）で、トルクレンチの使用が不可欠です。
測定用途: 締め付けられたねじのトルクを測定する作業に使用します。増し締め検査などで直読式トルクレンチが用いられます。また、トルクレンチをテコのように使用して、トルク以外の力量を測定する場合もあります。

トルクレンチの取り扱い

トルクレンチは、使用環境によっては乱雑に扱われがちです。精度が狂ったまま使用すると、正確な締め付けができなくなります。そのため、以下の点に注意して取り扱う必要があります。

打撃や衝撃を与えない。
加熱や凍結を避ける。
内部に水気やゴミを侵入させない。
メーカー指定以外の注油は行わない。
使用後は適切な方法で保管する。
定期的に点検・校正を行う。

また、トルクレンチには使用トルク範囲が定められており、範囲を超えて使用すると破損する可能性があります。右ねじ専用のトルクレンチを左ねじを緩めるために使用すると、精度に悪影響を与える可能性があります（製品によっては測定できないのみの場合もあります）。

主なメーカー

以下に、主なトルクレンチメーカーを挙げます。

TONE(トネ) - 日本
ゲドーレ(GEDORE) - ドイツ
信濃機販(SI) - 日本
[京都機械工具] - 日本
シーディーアイ(CDI) - アメリカ(Snap-onグループ)
スタビレー(STAHLWILLE) - ドイツ
スナップオン(Snap-on) - アメリカ
東日製作所(TOHNICHI) - 日本
トルクリーダー(Toruqueleader) - イギリス
中村製作所(KANON) - 日本
ノーバー(Norbar) - イギリス
ハゼット(HAZET) - ドイツ
ブリツール(BRITOOL) - イギリス
リッチモント(Sturtevant Richmont) - アメリカ
プロクソン(PROXXON) - ドイツ
アドレック(Adrec) - 日本

関連工具

トルクドライバー：トルクレンチと同様の機能を持つドライバー形状の工具。
* ソケットレンチ：多くのトルクレンチはソケットレンチの形態をしています。

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