ドキュメンテーション

ドキュメンテーション：情報の体系的整理と発信

ドキュメンテーションとは、情報を文書化し、証拠として提示したり、円滑なコミュニケーションを図るための活動です。単なる文書作成ではなく、情報の収集、整理、保存、検索、そして効果的な流通までを含む広範な概念です。国際ドキュメンテーション連盟の定義では、「科学、技術、社会科学、人文科学における記録情報の組織化、蓄積、検索、流通、評価」とされています。

ドキュメンテーションの多様な側面

ドキュメンテーションは、対象分野を問わず様々な場面で活用されています。例えば、ソフトウェア開発における仕様書やマニュアル作成、ビジネスにおける企画書、書籍出版における参考文献リストの作成などが挙げられます。

特に近年注目されているのが、美術分野におけるドキュメンテーションです。ここでは「アート・ドキュメンテーション」と呼ばれ、美術館やギャラリーが所蔵する作品に関する情報を収集・整理・保存する活動、そしてそれらの情報を社会に発信する活動を含みます。

美術におけるドキュメンテーション：アート・ドキュメンテーション

アート・ドキュメンテーションは、単なる作品目録の作成にとどまりません。作品に直接関連する情報（作家による記述、美術館作成の目録など）に加え、書籍、雑誌記事、研究論文、学術データなど、間接的な情報も幅広く収集・分析します。これらの情報をデータベース化し、公開することで、美術研究や鑑賞を深めるための基盤を提供します。

アート・ドキュメンテーションには、大きく分けて二つの側面があります。一つは、美術館や博物館、研究機関などが、展覧会、制作過程、作品背景といった情報を記録・保存することです。もう一つは、特にランドアートやパフォーマンスアートなど、直接体験が困難な作品を記録によって後世に伝え、鑑賞者に提供することです。これらの作品は、その場限りの出来事であったり、自然環境に依存しているため、記録が作品そのものの保存・伝達に重要な役割を果たします。

歴史的には、フランスのルーブル美術館やオルセー[[美術館]]の資料室における活動が、アート・ドキュメンテーションの先駆けと言えるでしょう。作家や画派に関する情報の収集、所蔵作品に関する論文や資料、展覧会カタログの収集・整理などが行われてきました。

ドキュメンテーションの標準化

ドキュメンテーション活動の効率性と情報共有の促進のため、国際標準化機構（ISO）による標準規格が制定されています。ISO 690（情報およびドキュメンテーション）やISO 5964（ドキュメンテーション－多言語シソーラス）などが、世界共通の枠組みとして利用されています。

ドキュメンテーションを支える組織

アート・ドキュメンテーションの分野では、国際的な連携や専門家の育成が盛んです。美術図書館協会は、美術図書館間の国際的な連携を促進し、研究活動の場を提供しています。また、国内では「アート・ドキュメンテーション学会」が活動しており、研究発表や情報交換の場を提供しています。

まとめ

ドキュメンテーションは、単なる文書作成を超えた、情報管理と発信の総合的な活動です。科学技術から人文科学、そして美術に至るまで、様々な分野で活用され、国際的な標準化も進んでいます。特に、美術分野におけるアート・ドキュメンテーションは、作品保存や研究、鑑賞体験の質を高める上で重要な役割を果たしており、今後もその重要性は増していくでしょう。これらの活動は、美術図書館や関連学会、国際機関の連携によって支えられています。

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