パサン

パサン (Pasang, Capra aegagrus)

パサンは、哺乳綱に属し、ウシ科ヤギ属に分類される野生のヤギの一種です。この種は、特にアジアや地中海の特定の地域に生息しており、一般には「野山羊」（ノヤギ）として知られています。パサンは、複数の亜種が存在するため、その生態や特徴は地域によって異なる点も興味深いところです。

分布と亜種の紹介

• - カフカスパサン (C. a. aegagrus): アゼルバイジャン、アルメニア、イラン、グルジア、トルクメニスタン、トルコなどに分布。
• - シンドパサン (C. a. blythi): イラン東部とパキスタンに見られる。
• - クレタパサン (C. a. cretica): ギリシャのクレタ島に生息。

これらの亜種は、それぞれ異なる環境や気候に適応して生きており、外見にも差異が見られます。

基本的な形態と特徴

パサンの体長はおおよそ120から160センチメートルで、肩高は70から100センチメートルに達します。体重は、オスで80から110キログラム、メスで32から50キログラムです。特にオスの成獣は、顎の体毛が非常に長く、老齢の個体では下顎を完全に覆うほどになります。毛衣の色は季節によって変わり、夏季には赤褐色、冬季には灰褐色になります。

角は非常にユニークな特徴を持ち、半月状をしており、先端が内側に向かっています。角の長さは58から138センチメートルに達し、基部から上部にかけて稜状の隆起があります。カフカスパサンでは角の前縁に瘤が存在しますが、シンドパサンではその特徴が見られません。このように、様々な形態的な特徴が彼らの生態の一部を形成しています。

生態と行動

パサンは、標高4200メートル以下の森林の間にある岩場や湿性草原に生息しています。特に断崖を好む傾向があり、オスは通常単独または若いオスの群れで生活し、メスと幼獣はより大きな群れを形成します。群れは通常5から25頭ですが、時には100頭以上の大規模な群れを形成することもあります。

食性については、植物を主に食べており、木の枝や葉、草類を好んで食します。繁殖期になると、オス同士は直立し、角を使って威嚇し合ったり、争ったりします。交尾は冬季に行われ、妊娠期間は約150から170日。春先の4月から6月にかけて1頭の幼獣を出産し、通常メスは3歳で初産を迎えます。

人間との関係

「パサン」という名前は、イランでの呼び名に由来しています。この種は野生化した家畜ヤギと区別するため、特に注意深く呼ばれることがあります。このパサンから派生した種が家畜化されてヤギになったと考えられており、その影響で他地域から持ち込まれたヤギの飼育も行われています。

しかし、食用や角を目的とした乱獲、さらに家畜ヤギとの競争・交雑などが影響し、生息数は減少傾向にあります。これによりパサンは、今後の保全が求められる重要な存在となっています。

パサンの保護活動が進むことで、この種の未来が明るくなることを期待しています。

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