ハンドリフト

ハンドリフトとは

ハンドリフトは、物流や倉庫などでパレットに積まれた荷物を、人の力で効率的に移動させるための機器です。正式な和製英語の名称ですが、英語圏ではパレットジャッキやパレットトラックなどと呼ばれます。油圧機構が内蔵されており、この力を使ってパレットを地面からわずかに持ち上げることで、重い荷物でも比較的軽い力で運搬できます。その機能から「手動式フォークリフト」とも表現されることがあります。

特徴と利用上の留意点

ハンドリフトは、フォークリフトと比較していくつかの優れた点があります。まず、特別な運転資格がなくても使用できるため、誰でも比較的容易に扱えます。また、コンパクトな設計のため、狭い通路や限られたスペースでのパレット移動に適しています。さらに、パレットを目的の位置に正確に配置しやすいという利点もあります。

一方で、いくつかの制約も存在します。パレットの構造によっては、ハンドリフトの爪が差し込めない場合があります。特に、下面が全面板で覆われている単面型以外のパレットでは、爪の抜き差し時に大きな音や振動が発生することがあります。両面使用タイプのパレットを扱う際は、ハンドリフトの前輪と後輪の間に収まるサイズのパレットでなければ、事実上移動が困難です。最大積載量は製品によって異なり、最も普及しているのは1500kgクラスですが、700kgから5000kgまで幅広いラインナップが存在し、扱う荷物や環境に応じて選択されます。

歴史

手動でパレットを運ぶための機器の歴史は古く、少なくとも1918年頃には既に存在していました。この頃の機器は「ハンド・トラック」と呼ばれ、油圧ではなく完全な手動式でした。垂直に取り付けられたハンドルは移動用に使われ、パレットを持ち上げる機構は、ラック部分に取り付けられた足踏み式のペダルによって動作しました。ペダルを踏むことで爪が上昇し、鈎と切り欠きによる原始的なロック機構で固定されていました。現代のハンドリフトは、この機械的な仕組みから油圧ポンプを利用する方式へと進化し、よりスムーズかつ効率的にパレットを持ち上げることが可能になっています。

主な種類

ハンドリフトにはいくつかのタイプがあります。

手動式: 最も一般的で広く普及しているタイプです。ハンドルを上下させるポンピング動作で油圧を発生させ、爪を上昇させます。昇降操作はハンドル部分のレバーで行い、移動は人力で引いたり押したりして行います。
電動式: バッテリーを搭載し、その電力で油圧ポンプを動かして爪を昇降させるタイプです。昇降のみ電動のモデルと、走行もモーターの力で行うモデルがあります。安全のため、ハンドルから手を離すと自動停止するデッドマンスイッチを備えている製品が多く見られます。より大型で電動走行するものは「リフター」や「リーチリフト」などと呼ばれます。
ラフテレーン・パレットジャッキ: 主に海外で見られるタイプで、大型の空気入りタイヤを装備しており、舗装されていない不整地や屋外での使用に適しています。車輪が本体の左右外側に配置され、中心に爪がある特徴的な構造です。
トラック・マウント・フォークリフト: これも海外で利用されることが多い方式で、トラック後部に装着された差し込み口に電動式ハンドリフトや小型フォークリフトを搭載し、配送先でその場で荷下ろしを行うために使用されます。

操作方法

ハンドリフトの基本的な操作は、パレットを爪で持ち上げた後、ハンドルを持って「引く」ことで行います。ただし、状況に応じて「押す」こともあります。フォークリフトと同様に後輪で操舵するため、押して進む操作には多少の慣れが必要です。パレットの昇降は、ハンドルを垂直位置から手前に倒すことで油圧がかかり上昇します。下降させる場合は、ハンドル近くのレバーや足元のペダルを操作します。基本的なモデルにはブレーキが装備されていませんが、ブレーキ付きの製品も存在します。

非常に狭い場所でパレットに爪を差し込むのが難しい場合は、前輪を手動で少しずらしたり、機器自体を一旦持ち上げて位置を調整したりする工夫が必要になることがあります。トラックの荷台などで使用するためにフォークリフトでハンドリフトを運ぶ際は、あらかじめハンドリフトの爪を少し上げておくと、フォークリフトの爪をスムーズに差し込めます。また、ハンドリフトの爪をパレットの奥まで入れずに移動させたり、爪を上げたままパレットを左右にこじって位置調整したりといった方法が現場で行われることもありますが、これらはパレットや積荷の損傷につながる可能性があるため、本来は推奨されない操作です。

多様な呼称

ハンドリフトは、日本国内でも地域や業界、製品によって様々な呼び名で呼ばれています。「ハンドパレットトラック」「パレットジャッキ」「ハンドリフター」といった一般的な名称のほか、「ハンド」と略されたり、特定のメーカーの商品名である「ビシャモン」「キャッチパレ」などで呼ばれることもあります。海外でもその名称は非常に多様で、英語圏でのパレットジャッキ、パレットトラックの他に、メキシコでの「パレットスケート」、ドイツでの「アマイズ（蟻）」、フランスでの「トランスパレット」、ロシアでの「油圧トロリー」、中国での「ハウ」など、地域ごとに独自の呼び方が存在します。

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