ハーベイ賞

ハーヴェイ賞：漫画界の栄光を称える賞

ハーヴェイ賞は、漫画家ハーヴェイ・カーツマン（1924年10月3日～1993年2月21日）の名を冠した、アメリカ合衆国を代表する漫画賞です。出版社ファンタグラフィックスが主催しており、1987年にカービー賞の後継として創設されました。

選考方法と授賞式

ハーヴェイ賞は漫画専門家による公開投票で受賞作品が決定されます。各部門5作品が最終候補として選出され、最終投票で受賞者が選ばれます。授賞式は、シカゴのComic-Con、ダラスのFantasy Fair、オークランドのWondercon、ピッツバーグのComiconなど、主要なコミックイベントに先駆けて開催されるのが特徴です。過去には、ニューヨークのMuseum of Comic and Cartoon ArtやボルチモアのBaltimore Comic-Conでも開催されました。

主要な部門と受賞作品

ハーヴェイ賞には、作品全体を評価する「Book of the Year Award」やデジタル作品を対象とする「Digital Book of the Year Award」など、数多くの部門が存在します。中でも注目されるのは、日本の漫画を対象とした「Best Manga部門」です。2017年の規格刷新に伴い新設され、日本の漫画文化への高い評価を示す重要な部門となっています。

主な受賞作品（Best Manga部門）

2018年：『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』（作：永田カビ）
2019年：『僕のヒーローアカデミア』（作：堀越耕平）
2020年：『とんがり帽子のアトリエ』（作：白浜鴎）
2021年、2022年、2023年：『チェンソーマン』（作：藤本タツキ）

この部門以外にも、「Best Children's or Young Adult Book Award」、「Best Adaptation From a Comic」、「Best European Book Award」、「Best International Book Award」など、幅広いジャンルの作品が表彰されています。さらに、漫画業界への貢献を称える「殿堂入り」や「International Spotlight Award」、「Comics Industry Pioneer Award」などの特別賞も存在します。

過去の受賞作品

ハーヴェイ賞の歴史を紐解くと、多くの名作や巨匠たちの名前を見つけることができます。

例えば、「最優秀ライター賞」ではアラン・ムーア、ニール・ゲイマンといった著名な作家が受賞し、「ベストアーティスト/ペンシラー部門」ではデイヴ・ギボンズ、ブライアン・ボランドといった、卓越した画力を持つアーティストが受賞しています。「ベスト漫画家部門(Writer/Artist)」では、作画とストーリーの両面で高い評価を得た作家たちが名を連ねています。これらの受賞作品は、漫画史において重要な位置を占め、漫画表現の進化に貢献した作品と言えるでしょう。

その他、ユーモアを重視した「ユーモア特別賞」、インキング、レタリング、カラーリング、カバーデザイン、プロダクションデザインといった部門においても、多くの優れた才能が表彰されてきました。

さらに、「最優秀新シリーズ賞」や「最優秀連続およびリミテッドシリーズ賞」「ベストシングルストーリー部門」「最優秀グラフィックアルバム賞」等、様々なカテゴリーで、漫画表現の多様性と発展を示す受賞作品が数多く存在します。 過去の受賞作の中には、『ウォッチメン』『サンドマン』『ラブ・アンド・ロケッツ』など、現在も高い評価を受けている作品が多く含まれています。

また、「Best Biographical, Historical, or Journalistic Presentation」「海外漫画賞」「最優秀リプリント賞」など、ノンフィクションや海外作品、復刻版なども評価対象となっている点は特筆に値します。特に海外漫画賞は、日本の漫画を含め世界中の傑作を称える国際的な賞としてのハーヴェイ賞の側面を際立たせています。

ハーヴェイ賞の意義

ハーヴェイ賞は、単なる漫画賞にとどまらず、漫画文化の発展に貢献した功績を称える賞と言えるでしょう。受賞作品は、表現技法の革新やストーリーテリングの進化、漫画の可能性を広げる作品が多く、漫画史に大きな足跡を残す作品ばかりです。 多くの受賞作品が、世界中の読者から愛され続けていることは、ハーヴェイ賞の権威と影響力の大きさを示しています。今後も、ハーヴェイ賞は漫画業界の指標として、漫画表現の新たな地平を開拓する作品を輩出し続けることでしょう。

もう一度検索