バックドラフト

バックドラフトとは、火災時に発生する特異な爆発現象です。これは、密閉された空間内で火災が発生し、不完全燃焼が進行することで生じます。不完全燃焼の結果、可燃性の一酸化炭素ガスが空間内に蓄積されます。この状態で、ドアや窓などを開けて新鮮な酸素が急激に供給されると、一酸化炭素が酸素と結合し、二酸化炭素への化学反応が急速に進みます。この反応が爆発的な燃焼を引き起こし、バックドラフトとして現れます。

バックドラフトは、瞬時に火の海となる「フラッシュオーバー」とは異なる現象です。フラッシュオーバーは、可燃性のガスが空間全体に広がり、一気に燃え上がる現象ですが、バックドラフトは不完全燃焼によって生成された可燃性ガスが、外部からの酸素供給によって爆発的に燃焼する点が異なります。

過去の事例として、1982年のホテルニュージャパン[[火災]]が挙げられます。この火災では、従業員が初期消火を試みようと客室のドアを開けた際にバックドラフトが発生し、被害が拡大しました。この事例からも、バックドラフトがいかに危険な現象であるかがわかります。

日本では、換気が十分に行われない土蔵で火災が発生した場合に、バックドラフトが起こりやすいことが知られています。母屋が火災に遭うと、隣接する土蔵の内部も高温になりますが、酸素供給が不十分なため、蔵の内部では不完全燃焼が進行します。この状態で蔵の扉を開けると、内部に溜まった一酸化炭素ガスが外部から供給された酸素と反応し、爆発的な燃焼を引き起こします。そのため、母屋で火災が発生した際には、隣接する蔵の内部温度が十分に下がるまで、決して扉を開けてはならないとされています。

バックドラフトは、火災現場で予測が難しく、非常に危険な現象です。消防活動においても、バックドラフトの発生を常に警戒し、慎重な対応が求められます。また、一般の人々も、火災が発生した際には、むやみにドアや窓を開けることのないよう注意が必要です。

関連事項

消火器: 火災の初期段階で有効な消火手段ですが、バックドラフトが発生する可能性のある状況下では、使用方法に注意が必要です。
消防: 火災現場での活動において、バックドラフトの発生を常に警戒し、適切な対応を行う必要があります。
耐燃性: 建物の耐燃性を高めることは、バックドラフトのリスクを低減する上で重要です。

外部リンク

バックドラフトの写真
* 【FAQ】バックドラフトとフラッシュオーバー - 消防研究センター

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