フラッシュオーバー

フラッシュオーバーとは

フラッシュオーバー（flashover）とは、火災における現象の一つで、爆発的な延焼のことです。火災が進行するにつれて室内の温度が上昇し、可燃物が熱分解を起こして引火性のガスが発生します。このガスが室内に充満した状態で、何らかの火種によって一気に引火すると、フラッシュオーバーが発生します。

また、天井の内装などに使われている可燃性の素材が、火災による輻射熱などによって一気に発火する場合も、フラッシュオーバーが発生する要因となります。

フラッシュオーバーが発生すると、室内は一瞬にして1,000℃を超える高温状態になります。これにより、避難が困難になるだけでなく、消防活動も大きく制限され、建物が全焼する可能性が非常に高くなります。航空機内など、閉鎖空間でのフラッシュオーバー対策は特に重要であり、内装材の選定や避難経路の確保などが厳格に定められています。

フラッシュオーバーと類似の現象

フラッシュオーバーと混同されやすい火災現象として、バックドラフトがあります。バックドラフトは、室内に充満した一酸化炭素などの可燃性ガスが、酸素の供給によって爆発的に燃焼する現象です。フラッシュオーバーは可燃性ガスへの引火、バックドラフトは一酸化炭素の爆発という点で異なります。

両者は大規模な延焼を引き起こす原因となり、気密性の高い広い空間では、フラッシュオーバーとバックドラフトが連続して発生する可能性もあります。

また、「フラッシュバック」という用語も存在しますが、これは火炎がガス供給路を逆流し、ガス供給元で爆発を引き起こす現象であり、フラッシュオーバーとは異なるものです。

過去の事例

日本では、ホテルニュージャパン火災や千日デパート火災でフラッシュオーバーが発生し、被害が拡大したことが知られています。

海外では、2007年にアメリカ合衆国サウスカロライナ州で発生した家具販売店舗兼倉庫の火災（Charleston Sofa Super Store fire）でフラッシュオーバーが発生し、9名の消防隊員が殉職するという痛ましい事故が起きました。

電気用語におけるフラッシオーバ（閃絡）

電気工学の分野では、直流電動機などの整流子を持つ電動機において、高負荷・高回転運転が継続した場合や、負荷の開放や空転によって回転数が大幅に上昇した場合に、整流作用が阻害されて火花が大量に発生し、その火花が整流子面を伝わるように短絡する現象を「フラッシオーバ（閃絡）」と呼びます。

また、故障や落雷などによる異常電圧によって、がいしの表面に沿って放電する現象も「フラッシオーバ」と呼ばれます。電気工学の分野では、語尾の長音符を省略して表記するのが一般的です。

関連項目

火災旋風
消火器
消防
耐燃性
* 奥飛火

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