バック・オーウェンス

バック・オーウェンス：ベーカーズフィールド・サウンドの創始者

アルヴィス・エドガー・"バック"・オーウェンス・ジュニア（Alvis Edgar "Buck" Owens, Jr.、1929年8月12日 - 2006年3月25日）は、アメリカを代表するカントリー歌手、ミュージシャン、作詞作曲家であり、ベーカーズフィールド・サウンドの創始者として知られています。彼は、ビルボードのカントリーチャートで21曲ものナンバー1ヒットを記録し、その音楽は多くの人々に愛されました。

生い立ち

1929年、バック・オーウェンスはテキサス州シャーマンのオーウェンス農場で生まれました。彼の愛称である「バック」は、農場にいたロバの名前に由来し、4歳の頃に自ら名乗るようになったと言われています。1930年代、アメリカはダストボウルと大恐慌という未曽有の危機に見舞われ、1937年、オーウェンス一家は生活を求めてアリゾナ州メサへと移住しました。

音楽キャリア

1945年、オーウェンスはレイ・ブリテンと共に15分のラジオ番組「バック・アンド・ブリット」の司会を務めました。しかし、彼はすぐに音楽の道から離れ、カリフォルニアでトラック運転手として働くようになります。1951年、彼は妻と共にベーカーズフィールドへ移り住み、再び音楽活動をスタートさせました。

当初、オーウェンスはキャピトル・レコードでトミー・コリンズ、ワンダ・ジャクソン、テネシー・アーニー・フォードなどの有名アーティストのギター伴奏を務める売れっ子ギタリストとして活躍しました。その後、彼はペップ・レーベルから「ホット・ドッグ」というロカビリーの楽曲を、コーキー・ジョーンズという名義でリリースしました。この名義を使用した理由は、カントリー音楽家としてのキャリアを築きたかったオーウェンスにとって、ロカビリーを発表することがキャリアに悪影響を及ぼすと考えていたためです。

その後、オーウェンスは2番目の妻とワシントン州へ移り、ダスティ・ローズのバンドでギターとボーカルを担当しました。1957年、彼はキャピトル・レコードとアーティスト契約を結び、自身の音楽を追求する道へと進みます。

1958年、ワシントン州タコマで、後に彼の音楽的パートナーとなるドン・リッチと出会いました。リッチのフィドルとノーキー・エドワーズのリードギターを加えた彼らの演奏は、地元で高い評価を得ました。

1959年、リッチと共演したシングル「セカンド・フィドル」がビルボードのカントリーチャートで24位となり、初めてのヒットを記録しました。同年、ダスティ・ローズとの共作「アンダー・ユア・スペル・アゲイン」が4位にランクインし、キャピトル・レコードはオーウェンスにベーカーズフィールドに戻るように要請しました。オーウェンスはリッチにも同行を勧めましたが、リッチはセントレーリア大学への進学を希望していたため、彼の願いは叶いませんでした。

1960年、シングル「アバヴ・アンド・ビヨンド」がチャートの3位にランクインしました。このシングルのB面には、ローズと共作した「ティル・ジーズ・ドリームズ・カム・トゥルー」が収録されています。同年11月、リッチは大学を中退し、オーウェンスのバンドに加わることを決意し、ベーカーズフィールドへ引っ越しました。これにより、オーウェンスとリッチの長きにわたる音楽的な協力関係が始まりました。

1963年、オーウェンスは「アクト・ナチュラリー」でナンバー1を獲得しました。当初、オーウェンスはこの曲をあまり気に入っておらず、録音することを躊躇していました。しかし、リッチがこの曲を気に入り、オーウェンスを説得して録音に至りました。この曲は、後にビートルズもカバーし、世界的に有名な楽曲となりました。

バック・オーウェンスは、その革新的な音楽性と才能により、カントリー音楽の歴史に名を刻む偉大なアーティストの一人として、これからも語り継がれるでしょう。

もう一度検索