バニップ

オーストラリアの謎の水棲UMA：バニップ

オーストラリア大陸の湖沼や河川に生息すると伝えられる伝説上の生き物、バニップ。その正体は謎に包まれており、古くからアボリジニの間で語り継がれる怪物の存在は、ヨーロッパ人が入植してからも長く信じられてきました。

バニップの呼称と正体に関する様々な説

バニップという名称は、オーストラリア全土の先住民共通の言葉ではなく、特定地域の先住民の言葉が新聞記事を通して広まったと考えられています。そのため、地域によって呼び名やその生態に関する記述は様々です。

初期の目撃談や報道では、バニップは「25cmもある膝の関節が見つかった」など、実在する生物として捉えられ、その正体について様々な説が生まれました。ヒョウアザラシなどの海獣類、絶滅した大型哺乳類ディプロトドン、牛やラクダなどの外来種、さらにはプレシオサウルスといった古生物まで、多様な候補が挙げられてきました。

1883年には、メルボルン近郊でバニップとされる生物が捕獲され、その毛皮や骨格が保存されたという報道もありましたが、後に標本は紛失。この出来事によってバニップは実在する生物か否かという議論がさらに複雑なものとなり、実在を示す証拠は存在せず、現在でもその正体は不明です。

先住民の伝承では、バニップは善神ビアミと対立する悪霊とされ、鳥のような頭、ワニのような胴体、そして毛に覆われた体を持つとされています。また、人間、特に女性を襲う危険な存在とされており、その鳴き声は「ブー」という唸り声だと言われています。

一方、バニップの姿かたちは、アボリジニの伝承の中でも一貫しておらず、アザラシのようなものから恐竜のようなものまで、様々な描写が混在しています。共通しているのは、その大きな鳴き声と、人を襲うという危険性です。

バニップの正体を探る試み

19世紀には、バニップの骨格が発見されたとされるニュースが報じられましたが、後にそれらはディプロトドンの化石であることが判明しました。1994年には日本のテレビ番組で、シドニー大学の博物館にあるというバニップの骨と毛皮が紹介されましたが、それらは奇形の馬の子どもの骨と毛皮であると結論付けられました。

南方熊楠は、バニップをジュゴンと関連付けて考察し、淡水域を遡上するサメの可能性も示唆しています。また、バニップの鳴き声とされるものの中には、サンカノゴイなどの鳥の鳴き声と混同されている可能性も指摘されています。

このように、バニップの正体を探る様々な試みが行われてきましたが、いまだに決定的な証拠は得られていません。

バニップとフィクション

バニップは、オーストラリアの未確認生物として、多くのフィクション作品にも登場しています。日本の特撮番組『ウルトラマンネクサス』では、日本国内で噂されるUMAとしてバニップが登場し、その存在感を示しています。

まとめ

バニップは、オーストラリアの先住民アボリジニの伝承から生まれた謎めいた水棲UMAです。その正体は謎のままですが、様々な説や目撃談、フィクション作品への登場を通して、その存在感は現代においても失われていません。バニップは、オーストラリアの豊かな自然と文化が織りなす、ミステリアスな存在として、今後も人々の興味を引き続けることでしょう。

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