サンカノゴイ

サンカノゴイ（山家五位）

サンカノゴイ（学名：Botaurus stellaris）は、ペリカン目に属するサギ科の鳥類の一種です。

分布

この鳥は、広範囲にわたる分布域を持ち、ユーラシア大陸の中央部、北アフリカ、そして南アフリカの一部で繁殖が確認されています。北方に生息する個体は、冬季にはより温暖な東南アジアやインド、アフリカといった地域へ渡り越冬します。日本国内においては、北海道、滋賀県の琵琶湖、茨城県の霞ヶ浦、千葉県の印旛沼などで繁殖行動が報告されています。北海道では夏季に飛来する夏鳥として知られていますが、これらの他の繁殖地周辺では一年を通じて見られる留鳥として生息しており、その個体数は少ない状況です。また、本州以南の地域では、冬季に少数の個体が冬鳥として渡来することが知られています。

形態

サンカノゴイは、全長およそ70センチメートル、翼を広げた際の開長は125から135センチメートルに達する、比較的大型のサギの仲間です。その体形はずんぐりとしており、ボリューム感があります。全身はくすんだ黄褐色を基調とし、不規則な形状の黒褐色の斑点が散りばめられています。頭のてっぺんから顎にかけての線は黒褐色です。体の下面はやや白っぽい黄褐色で、特に胸の部分には暗褐色の縦縞模様が見られます。普段は短く見えますが、必要に応じて首を長く伸ばすことができます。足は黄緑色をしており、雌雄間で外見上の明確な違いはほとんどありません。

生態

主に湿地帯、湖沼、河川沿いの広大なヨシ原や湿原などを生息環境として選びます。繁殖期を除けば、ほとんどの場合単独で行動することが多いです。日中は茂みの中に潜んでおり、警戒心が非常に強いため、人間の目に触れる機会は少なく、観察するのが難しい鳥とされています。危険を感じたり周囲を警戒したりする際には、首をまっすぐ上に長く伸ばす姿勢をとることがあります。この際、草の中から首だけが突き出ている様子が見られることがあります。

食性は動物質で、餌とするのは主にカエルなどの両生類、魚類、エビやカニなどの甲殻類ですが、ヘビのような爬虫類やネズミなどの小型哺乳類、さらには小型の鳥類を捕食することもあります。採食活動は主に夕方から始まり、早朝にかけて行われることが知られています。水辺や水中に身を潜め、獲物が近づくのを待ち伏せます。獲物を見つけると、素早く長い首を伸ばし、鋭い嘴を突き出して捕らえます。

日本における繁殖期は、例年4月下旬から7月にかけてです。巣は枯れ草やヨシの茎などを積み上げて作られ、一度に3個から7個の卵を産みます。卵を温める抱卵期間は約25日間で、抱卵および雛の世話は主に雌が行います。その間、雄は巣を中心とした縄張りを守る役割を担います。雛鳥は孵化後2週間から3週間ほどで巣から出て、巣のすぐ近くで過ごすようになります。そして、およそ50日から55日で親鳥から完全に独立します。

繁殖期には、特徴的な鳴き声を発します。「ボォー、ボォー」と表現されるその声は、非常に低く響き渡り、遠くまでよく聞こえます。この鳴き声は繰り返し発せられます。主に夜間に鳴くことが多いですが、しばしば日中にも鳴いている姿が確認されます。

亜種

サンカノゴイは、現在以下の2つの亜種に分類されています。

Botaurus stellaris stellaris：基亜種であるサンカノゴイ。ユーラシア大陸の中央部から北アフリカにかけて分布しています。
Botaurus stellaris capensis：主にアンゴラ、ザンビア、モザンビーク、南アフリカといったアフリカ大陸南部に分布する亜種です。

保全状態

日本国内におけるサンカノゴイは、もともと生息数が多くないことに加え、彼らの主要な生息地である広大な湿地やヨシ原の消失、さらには餌となる小型動物の減少などが重なり、絶滅の危機に瀕しています。このため、環境省のレッドリストでは、絶滅の危険性が高い絶滅危惧IB類（EN）に指定されています。一方、国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストにおいては、現在のところ比較的危険度の低いLEAST CONCERN（低懸念）と評価されていますが、これは世界的な総個体数に基づく評価であり、地域によっては深刻な状況にあることを示唆しています。

もう一度検索