バレンシアオレンジ

バレンシアオレンジ：その歴史と栽培

バレンシアオレンジは、世界中で愛されるスイートオレンジの中でも特に有名な品種です。名前からスペイン東部のバレンシア州を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、その原産地は意外にもアメリカ合衆国カリフォルニア州サンタアナです。

誕生と普及

1800年代中頃、カリフォルニア州サンタアナでウィリアム・ウルフスキル氏によって初めて栽培されました。その後、アーバイン社が栽培権を取得し、大規模な生産に乗り出します。この大規模生産は、ロサンゼルス郡からオレンジ郡が分割されるという、地域社会にも大きな影響を与えました。オレンジ郡での生産はサンキスト・グローワーズへと引き継がれましたが、1990年代半ばにはコスト高騰のため生産が終了しました。それでも、バレンシアオレンジは南カリフォルニアの柑橘類産業の基礎を築いた重要な品種と言えます。

イギリスの養樹園主、トマス・リバースは1865年、バレンシアオレンジを「エクセルシオール」の名でカタログに掲載し、カリフォルニアとフロリダの顧客に苗木を販売しました。このことが、バレンシアオレンジの北米における更なる普及に貢献したと考えられます。

日本での栽培：挑戦と課題

日本でもバレンシアオレンジの栽培が試みられていますが、いくつかの課題があります。多くのスイートオレンジ品種と同様に、カンキツかいよう病に弱く、病気への対策が不可欠です。さらに、高温期に起こる「回青現象」と呼ばれる、果皮が青みがかってしまう現象を防ぐために、袋がけという手間のかかる作業が必要になります。これらの理由から、日本での経済的な大量生産は容易ではありません。

2010年の日本のバレンシアオレンジの収穫量は364トンと記録されており、そのほとんどが和歌山県（314トン）と神奈川県（50トン）で生産されました。これらの地域では、生産技術の向上や病害虫対策に工夫を凝らしながら、栽培に取り組んでいると考えられます。しかし、生産量は依然として少なく、日本の市場においては、輸入品に多くを頼っているのが現状です。

まとめ

バレンシアオレンジは、その歴史と、生産地における経済的な影響から、単なる果物以上の存在感を持ちます。カリフォルニア州サンタアナで誕生し、世界中に広まったバレンシアオレンジは、生産地や消費地の気候条件、栽培技術によって、その生産規模や品質に大きな違いが見られます。日本における栽培は、病害虫対策や回青現象への対策など、多くの課題を抱えながらも、生産者たちの努力によって続けられています。今後、さらなる技術革新や、消費者ニーズの多様化に対応していくことが、日本のバレンシアオレンジ生産にとって重要となるでしょう。

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