果皮

果皮とは

果皮（かひ、英: pericarp）とは、植物の果実において、雌しべの子房壁が発達した部分を指します。果皮は、種子を包み込み保護する役割を担うだけでなく、種子散布を効率的に行うための構造や仕組みを備えていることもあります。

一般的に「果皮」という言葉は、果実の最も外側の部分、つまり表面を覆う部分を指すことがあります。これは生物学的な意味での果皮の一部に相当します。

果皮の構造

被子植物では、雌しべの子房が発達して果実となり、子房の中にあった胚珠が種子となります。果実となった際、子房の壁だった部分が果皮となります。雌しべは心皮という構造から構成されており、果皮は果実における心皮の部分と考えることができます。

果皮は基本的に、外側から外果皮（がいかひ、exocarp）、中果皮（ちゅうかひ、mesocarp）、内果皮（ないかひ、endocarp）の3層構造をしています。外果皮は比較的明確な層ですが、中果皮と内果皮が多汁質で区別が難しい場合は、これらをまとめて内果皮と呼ぶこともあります。また、果皮が薄い場合など、層の分化が不明瞭なことも少なくありません。イネ科の果実（穎果）では、果皮が種皮と癒合しているのが一般的です。

果皮は、成熟したときに多肉質または多汁質である場合と、乾燥している場合があります。前者の場合、その果実は液果または多肉果と呼ばれ、果皮は果肉（sarcocarp）とも呼ばれます。後者の場合は、乾果と呼ばれます。

モモの果実のように、内果皮が特に硬化している場合は、その部分を核（果核; stone, putamen）と呼びます。ミカンのような果実では、外果皮が緻密で油細胞を含みフラベド、中果皮が白く海綿質でアルベドと呼ばれます。

子房下位の植物では、雌しべの子房が花托に包まれています。多くの場合、この花托由来の部分も果実の外皮を構成しており、これは厳密には果皮ではなく偽果皮と呼ばれることがあります。しかし、実際にはその区別は不明瞭で、まとめて果皮と呼ばれることも多いです。

乾燥した果実である乾果は、成熟時に果皮が裂開しない閉果（非裂開果）と、裂開する裂開果に分類されます。液果の果皮は通常裂開しませんが、アケビのように裂開する例外もあります。

種子散布における役割

果皮は種子を包み、以下のような種子散布のための役割を果たします。

動物被食散布: 多肉質や多汁質の果皮は、鳥や哺乳類の食料となり、被食された後に種子が排出されることで散布されます。
貯食散布: ドングリなどの硬い果皮を持つ果実は、げっ歯類やカケスなどが食用として運び、貯蔵することで、食べ残しが発芽します。
動物付着散布: カギ状の毛や粘液を持つ果皮は、動物の体に付着して運ばれることで散布されます。
水散布: コルク質などで軽い果皮は水に浮きやすく、水流によって運ばれます。
風散布: 薄い翼状の果皮を持つ果実は、風によって遠くまで運ばれます。
自動散布: 果皮の変形や乾燥収縮、細胞の膨圧によって、種子を自力で射出する植物もあります。

人間との関わり

人間は、様々な果実を食用として利用しています。穀物のように種子を食べる場合が多いですが、アボカドやバナナ、ブドウ、モモ、キュウリ、カキ、キウイフルーツ、ピーマン、トマトのように果実の他の部分を食べることもあります。甘みが強いものは果物、野菜として利用されるものは果菜と呼ばれます。

多くの果実では、中果皮と内果皮、または中果皮が多肉質・多汁質になっている液果が利用されます。ミカン科の果実では、内果皮内面にできた毛に果汁が溜まったものが利用されます。リンゴやナシ、ビワなどのナシ状果では、花托部分が食用となり、本来の果皮は芯として残ります。

インゲンマメやエンドウ、オクラのように、未成熟な果実の果皮が食用として利用されることもあります。

オリーブなどの果皮には油分が多く含まれており、食用油や石鹸に利用されます。コショウやトウガラシの果皮は精油やアルカロイドを含み、香辛料として用いられます。また、果皮は香料の原料としても使われます。

果皮やその成分は薬用として利用されることもあります。アヘンのように、ケシの未熟果実の果皮から得られるものもあります。また、果皮から得られる色素が染料として用いられることもあります。

カボチャやヒョウタン、ココヤシなどの果皮は、飾りや容器として利用されることがあります。ヘチマやココヤシの果皮から得られる繊維は、様々な用途に利用されています。

このように、果皮は植物にとって重要な役割を果たすだけでなく、人間の生活にも深く関わっています。

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