パイロキネシス

パイロキネシス：炎を操る超能力の謎

パイロキネシス（pyrokinesis）は、超心理学における超能力の一つで、火を発生させる能力を指します。この言葉は、ギリシャ語の「 πυρ（pûr）」（火、稲妻）と「κίνησις（kínesis）」（動き）に由来し、スティーヴン・キングの小説『ファイアスターター』で初めて用いられたとされています。

概要

パイロキネシスの事例として報告されるのは、能力を持つとされる人が、意図せず周囲で火災を引き起こしてしまうケースが多いです。1965年にブラジル、1983年にイタリア、1986年にはウクライナで、特定の少年少女がいる場所でのみ火災が頻発するという事件が発生しました。これらの事件は、当事者がパイロキネシス能力によって無意識に発火を引き起こしたと考えられています。

また、1986年にはアメリカで、少年が見つめるだけで物が発火すると報道され、人々を恐れさせた事例もあります。超常現象研究者のチャールズ・フォートは、火の触媒となる人間が存在し、その多くが20歳以下の少年少女であると述べています。

1982年にはイタリアで、ベビーシッターをしていた女性が超自然的な能力で火災を起こしたとして裁判で有罪判決を受けた事件も起きました。この事件は「魔女と呼ばれたベビーシッター」としてメディアで大きく取り上げられ、映画『スーパーファイアー』のモチーフにもなりました。人体自然発[[火現象]]についても、被害者がパイロキネシス能力を持っていたためとする解釈もあります。

無意識に火を発生させるだけでなく、意図的に物体を発火させることができたという事例も存在します。1882年のアメリカでは、24歳の青年が息を吹きかけたり手でこすったりするだけで紙や布を燃やすことができたと報告されています。また1927年には、自動車整備士が息のみで物を燃やすことができたという証言もあります。

パイロキネシスは、小説『ファイアスターター』やマーベルコミックのヒューマン・トーチ、テレビドラマ『Xファイル』や『FRINGE/フ[[リンジ|FRINGE_フリンジ]]』など、多くの創作作品で人気のあるテーマとして扱われています。

原理

パイロキネシスの原理については、いくつかの推測があります。その一つとして、体内に帯電した静電気が強力な電磁波となって放射され、発火を引き起こすという説があります。2005年のオーストラリアでのビル火災では、現場にいた男性の足跡が焦げついていたことが確認され、その男性の衣服が4万ボルトの電気を帯電していたという調査結果が報告されています。このことから、静電気が自然発火の原因になったとする説が唱えられました。しかし、静電気だけで発火するには、様々な条件が必要で、通常ありえないほどの高電圧が必要であると専門家は指摘しています。

2012年にはベトナムで、少女の周囲で原因不明の火災が頻発した際、彼女の右脳半球に異常な周波数の電波が計測され、その電波が能力を発現させたとする研究結果が報告されました。

創作作品においては、物体を構成する原子を刺激して熱エネルギーを増やすことで発火を促すと説明されることが多いです。しかし、実際には発火するためには、空気中の酸素に触れると自然発火する化合物や、発火を誘発する装置が必要であるとされています。

意図的な発火能力については、トリック説も提唱されています。たとえば、1882年に報告された青年の事例では、リンのような発火点の低い物質を隠し持ち、摩擦や吐息の熱で発火させた可能性が指摘されています。

まとめ

パイロキネシスは、現実世界で確認されている現象ではありませんが、その神秘的な力は人々の想像力を掻き立て、様々な創作物で魅力的なテーマとして描かれ続けています。科学的な解明には至っていないものの、その謎めいた魅力が、多くの人々を惹きつけていることは間違いありません。

参考文献

並木伸一郎「発火念力「パイロキネシス」の謎」『ムー』第34巻第9号（通巻382号）、学研パブリッシング、2012年9月
ブライアン・ホートン『超常現象大全 マインドリーダー、超能力者霊媒の秘密を解き明かす!』福山良広訳、ガイアブックス、2012年

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