パンドーロ

イタリアの伝統菓子、パンドーロ：黄金のパンの物語

パンドーロは、イタリアのヴェローナ地方で生まれた伝統的なクリスマス菓子です。パネットーネと並ぶクリスマスの定番として知られ、星型をした独特の形状と、バニラが香る上品な甘さが特徴です。ふわふわとした柔らかな食感は、多くの人々を魅了し続けています。

パンドーロの特徴：黄金の輝きと繊細な風味

パンドーロの生地は、卵黄をたっぷり使用することで生まれる、美しい黄金色をしています。バニラの香りが豊かに漂い、口にした時の柔らかな食感は、まさに至福のひとときです。形状は、先端が尖っていない円錐形で、星型のような8つの頂点を持つのが一般的です。材料は、小麦粉、砂糖、卵、バター、カカオバター、そしてイースト菌を使用。複雑な工程を経て、丁寧に焼き上げられます。

パンドーロとよく比較されるパネットーネは、ドライフルーツが入っている点が大きな違いです。パネットーネはミラノの銘菓として知られています。

パンドーロの歴史：古代から続く黄金のパン

パンドーロの歴史は古く、古代ローマまで遡るとする説もあります。当時使用されていた材料は、卵、バター、オリーブオイル、そして様々な小麦をブレンドした最高級の小麦粉だったと言われています。

現代に繋がるパンドーロのレシピは、13世紀のヴェネツィア貴族の宮廷で供されていた「pane de oro（黄金のパン）」に由来するとされています。中世において、甘いパンは特別なものであり、貴族階級へと献上されるものでした。この「黄金のパン」は、卵、バター、砂糖、そしてハチミツをふんだんに使用した贅沢なパンであり、王宮で珍重され、王のパン、あるいは黄金のパンと呼ばれていました。

また、オーストリアで研究され「ウイーンのパン」と呼ばれていたパン、あるいはヴェローナ伝統のクリスマス菓子「ナダリン」がルーツとする説も存在します。ナダリンはパンドーロと同様に星型をしていて、バターの量は少ないものの、パンドーロの起源を考察する上で重要な存在です。

17世紀には、ガリレオ・ガリレイの娘であるマリア・チェレステが、小麦粉、砂糖、バター、卵で作られた「王のパン」についての手紙の中で言及しています。18世紀以降は、パンドーロに関する記述が増え、1894年にはドメニコ・メレガッティがパンドーロの製造工程の特許を取得しました。

現在では、メレガッティ社がパンドーロを代表的な製品として販売しており、世界的な規模を誇る製菓会社として知られています。

パンドーロの名前の由来：黄金に輝く３つの物語

パンドーロという名前の由来は諸説ありますが、明確な証拠はありません。そのため、いずれの説も物語の域を出ませんが、主な説として3つが挙げられます。

1つ目は、ヴェネツィア共和国の習慣に関連する説です。かつてヴェネツィア共和国では、富の象徴としてお菓子の表面を金箔で飾る習慣があり、そこから「pan d'oro（黄金のパン）」と呼ばれたという説です。

2つ目は、ヴェローナの老人たちが語り継いできたおとぎ話に由来する説です。天使が食べる金のパンにちなんで名付けられたというものです。

3つ目は、使用人が名付けたという説です。ある若い使用人が、卵をふんだんに使用した黄色いお菓子を見て、「金のパンだ！(pan d'oro!)」と叫んだことが由来という説です。

いずれの説にも共通しているのは、パンドーロの名前がその美しい黄金色に由来しているという点です。

パンドーロ：イタリアのクリスマスを彩る至福の味わい

パンドーロは、その独特の形状、バニラの香り、そして柔らかな食感から、多くの人々に愛されるイタリアを代表するお菓子です。クリスマスの食卓を華やかに彩るだけでなく、特別な日の贈り物としても最適です。その歴史と伝統、そして繊細な味わいを、ぜひご堪能ください。

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