ファシリティマネジメント

ファシリティマネジメント（FM）の解説

ファシリティマネジメント（Facility Management、略称：FM）とは、組織の事業活動を円滑に進めるために、施設とその周辺環境を総合的に企画、管理、活用する経営手法です。第二次世界大戦後のアメリカで生まれ、近年ではISO 41001の国際規格化もされるなど、世界的に広がりを見せています。単なる「施設管理」を超え、経営戦略に直結する重要な役割を担っています。

従来の施設管理との違い

従来の施設管理は、施設が使用可能な状態を維持することに重点を置いていました。故障や事故への対応は必要でしたが、それらはあくまで偶発的な事象への対処であり、施設の利用効率や経営への貢献といった視点が不足していました。

これに対し、FMは、施設を経営資源と捉え、組織全体の目標達成に貢献することを目指します。快適な職場環境の整備による生産性向上、コスト削減、資産の有効活用など、多角的な視点から施設の企画・管理・活用を最適化することで、組織全体の価値を高めることを目的としています。

FMの対象範囲

FMの対象は、建物や設備といったハード面だけでなく、職場環境や従業員の働きやすさといったソフト面も包含します。具体的には、建物構造、空調、電気・照明、セキュリティ、清掃、廃棄物処理、ITインフラなど、幅広い領域がFMの対象となります。

FMの多義性と各団体の定義

FMの定義は必ずしも統一されておらず、組織や国によって解釈が異なります。これは、業種や組織規模、施設の所有形態、FMに関わる専門家の多様性など、様々な要因が影響しているためです。

代表的な組織によるFMの定義を以下に示します。

ISO 41001（国際標準化機構）: 企業・団体等が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動
日本ファシリティマネジメント協会（JFMA）: 経営的視点に立って建築等の施設類を有効・適切に計画・整備・運営・管理し、企業活動の展開に貢献する全体的な取り組み
国際ファシリティマネジメント協会（IFMA）: 効率的な執務環境を提供するため、実証された管理業務と最新の技術知識を結び付ける経営活動

これらの定義に共通するのは、FMが単なる維持管理ではなく、組織全体の経営戦略に貢献する活動であるという点です。

FMの歴史と発展

FMは、戦後のアメリカの経済発展の中で生まれました。当初は施設の新設・拡大が中心でしたが、オイルショック以降はコスト削減の必要性が高まり、FMの重要性が認識されるようになりました。近年では、情報化社会の進展や環境問題への意識の高まりなども、FMの発展を促す要因となっています。

FMの目的と効果

FMの目的は、大きく分けて以下の点が挙げられます。

環境の向上: 快適な職場環境の整備による従業員の満足度向上と生産性向上
生産性の向上: 効率的なワークスペースの設計と管理による業務効率の改善
施設関連経費の削減: エネルギー消費量の削減、維持管理費用の最適化など
資産の有効活用: 施設のライフサイクル全体を考慮した管理による資産価値の最大化
企業イメージの向上: 施設の品質向上による企業イメージの向上とブランド価値の向上

これらの目的を達成することで、組織全体の競争力強化に繋がる効果が期待できます。

国際規格と日本におけるFM

FMに関する国際規格として、ISO 41001シリーズが制定されています。この規格は、FMシステムの構築と運用に関する要求事項を定めており、FMの標準化と普及に大きく貢献しています。

日本においても、国土交通省や経済産業省などを中心に、FMの普及促進に向けた取り組みが進められています。官公庁施設だけでなく、民間企業においてもFMの導入が進み、その重要性はますます高まっています。

FMに関わる組織と資格

FMに関する専門団体としては、IFMAやJFMAなどが知られています。また、FMに関わる資格も多数存在し、専門性の向上と人材育成が積極的に進められています。代表的な資格としては、認定ファシリティマネジャーなどが挙げられます。

まとめ

FMは、単なる施設管理を超えた、組織全体の経営戦略に貢献する重要な経営手法です。国際規格の制定や普及促進活動など、FMを取り巻く環境はますます整備され、今後ますますその重要性が高まると予想されます。

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